テレビ番組制作会社の倒産が高水準 2023年は過去10年間で最多を更新

テレビ番組の制作会社の倒産が、今年9月までに過去10年間で最多を更新した。2023年1-9月のテレビ番組制作会社の倒産は14件に達し、前年同期(6件)の2.3倍のペースで増加している。
通年比較でも2014年以降の10年間で、最多だった2018年の13件をすでに超えている。2020年のコロナ禍の当初は、緊急事態宣言の発令による外出自粛などで番組制作の中止や延期を余儀なくされ、制作会社の業績に大きく影響した。長引く受注減に加え、制作コストや人件費の上昇などから、小規模の制作会社を中心に、倒産は今後も高い水準で推移する可能性が高い。
テレビ番組制作会社の倒産は、小規模業者を中心に推移している。2023年1-9月の14件では、約8割の11件(構成比78.5%)が資本金1,000万円未満だった。負債も5,000万円未満が12件(同85.7%)を占め、代表者を含めた従業員数名の小・零細規模が中心。
倒産企業を都道府県別でみると、14件のうち、東京都が11件(同78.5%)、大阪府が2件、愛知県が1件で、テレビ局や関連の制作会社が集まる都市部で発生している。
業態では、特に旅番組やグルメ番組、街歩きなど、比較的少額予算の番組をメインに請け負う会社の倒産が散発している。
テレビ局本体が中心となって制作する従来の番組に加え、海外のコンテンツサービス会社の台頭など、視聴者のニーズも多様化している。地上波だけでなく、衛星放送やネット配信番組も勢いを伸ばしており、制作会社の経営にどう影響するか注目される。
※本調査は、日本産業分類の「テレビジョン番組制作業」(テレビ番組制作会社、負債1,000万円以上、 2023年は1月-9月に発生分)を集計、分析した。


【資本金別】「1千万円未満」が約8割

テレビ番組制作会社の倒産は、2023年1-9月で14件に達した。通年でも過去10年で最多だった2018年の13件をすでに上回っている。
資本金別では、「1千万円以上」は3件(構成比21.4%)にとどまる。最多レンジは「1百万円以上5百万円未満」7件(同50.0%)だった。「1千万円未満」は11件(同78.5%)と全体の約8割を占めた。このうち、「1百万円未満」も2件(同14.2%)あり、代表者を中心に営業する小・零細規模が大半を占めた。

【負債額別】「5千万円未満」が8割超

倒産した14件の負債額別は、負債「5千万円以上」は2件(構成比14.2%)にとどまった。
14件のうち、最大の負債額は6,800万円で、1億円に満たなかった。
通常の事業会社と異なり、商品在庫を抱える必要はなく、資金需要は機材コストや人件費などが大半を占める。また、社会保険料や法人税などの公租公課も従業員が少なく規模が小さいため負担は限定的で、負債の大型化を抑制している。

【従業員数別】「5人未満」が9割超

倒産した14件を従業員数別でみると、「5人未満」が13件(構成比92.8%)と9割超を占めた。
5~9人は1件(同7.1%)にとどまり、代表者を含め従業員数名の小・零細規模の企業のみが大半だった。
従業員が数名の小・零細規模の企業は、多くが財務面がぜい弱な傾向にあり、コロナ禍の急激な受注減などへの対応も困難な状況にある。
さらに、受注先も実質的に主要1社か2社に傾注する企業が散見され、主要取引先からの受注減少は、そのまま資金繰り悪化に直結するリスクとなっている。


電通の「日本の広告費」によると、2022年のテレビメディア(地上波テレビ+衛星メディア関連)の広告費は1兆8,019億円(前年比2.0%減)で、2013年の1兆9,023億円から約1,000億円減少した。
2022年の総広告費は7兆1,021億円で、2007年以来の7兆円台に乗せ、過去最高を更新した。ただ、テレビメディアの広告全体に占める割合は25%に縮小している。テレビ局の番組制作費は減少の一途をたどり、上場する在京キー局5社(連結)の制作費は、2022年度と2017年度を比較すると、テレビ東京を除く4社で減少している。制作費が増加したテレビ東京も強化コンテンツは主にアニメや配信が中心で、従来のテレビ番組制作からは大きく変容している。近年はインターネットを通じた動画関連のプラットフォームの台頭や専門チャンネルの普及で、視聴者の求めるコンテンツや、番組も多様化している。

テレビ番組制作会社を取り巻く環境はコロナ禍で大きく変貌した。2020年のコロナ禍では、バラエティ番組などの番組制作、撮影が軒並み中止や延期となり、下請けとして制作に参加していた業者の経営を直撃した。コロナ禍前から人気だった「街歩き企画」「グルメ特集」「旅行企画」を主力にしていた制作会社は、外出自粛要請の長期化により、特に受注減少が影響した。また今後は、「SMILE-UP.」(旧ジャニーズ事務所)をめぐるテレビ番組の構成変化に伴う経営への影響も懸念される。
一部の制作会社は、コロナ関連の給付金やゼロゼロ融資などを活用して事業を継続し、行動制限の解除まで何とか持ちこたえたが、受注額がコロナ禍前まで回復せず、2023年に事業を停止する“息切れ”倒産も発生している。テレビメディアの広告費漸減傾向が続くなか、テレビ番組制作会社の倒産は、しばらく高水準をたどる可能性が高い。

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