奈良県、シカ収容環境「不適切」 保護の在り方検討へ

奈良県庁で記者会見する山下真知事=6日午後

 奈良県は6日、県の委託を受けて国の天然記念物「奈良のシカ」の保護に取り組む「奈良の鹿愛護会」(奈良市)の施設について、シカを過密に収容するなど飼育環境が「不適切」だったとする調査結果を公表した。今後、有識者らによる指導、助言をするとともに、農業被害を出したシカが入る特別柵の在り方も検討する。

 愛護会は、農作物に被害を与えたシカなど約240頭を保護施設「鹿苑」の特別柵と呼ばれるエリアに収容。今年8~9月、愛護会の獣医師が県や奈良市に「十分な餌が与えられていない」など虐待の疑いを通報し、問題が表面化した。

 県の調査は、獣医師ら4人のチームで実施。動物福祉に関する国際指標に照らし、柵内のシカの多くは栄養不足により痩せており、過密に収容するなど、不適切な環境で飼育されていると判断した。一方、愛護会が少ない予算や人員でシカ保護に関する業務を担っている現状も指摘した。

 記者会見した山下真知事は「管理を任せ切っていた県にも責任がある」と強調。今後は独自に調査する奈良市など関係機関と議論したいとした。

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