家具・インテリア大手のニトリホールディングスが、ベトナム南部ビンズオン省のショッピングセンターにベトナム1号店を出店することが6日分かった。早ければ年内にも開業する見通しだ。ニトリは所得水準の上昇が続く東南アジアで出店を加速させており、ベトナムでも拡大する内需の取り込みを図る。
1号店は東急の合弁会社が運営するビンズオン新都市のショッピングモール「ソラ・ガーデンズSC」にオープンする。面積は約2,000平方メートルで、日本の標準的なニトリの店舗より小さいが、東南アジアでは平均的な規模となる。キッチン用品やテーブルなど主力商品を中心に4,000品目を取りそろえる。
外資の流通小売店が、ベトナム1号店を最大都市のホーチミン市や首都ハノイ以外に出すのは異例だが、工業団地が集積するビンズオン省は近年急速に発展しており、ニトリとしても十分な商圏があると判断した。
同省の2022年の1人当たり平均月収は807万6,000ドン(約329米ドル、4万9,200円)と全国63省市で最も高く、2位のハノイ市(642万3,000ドン)、3位のホーチミン市(639万2,000ドン)を25%余り上回る。7月に開業したソラ・ガーデンズSCは、東急の合弁会社ベカメックス東急が運営する。総合スーパー「イオン」や衣料品店「ユニクロ」など日系大手小売りも出店しており、周辺の消費者に日本ブランドが浸透している。ソラ・ガーデンズSCがあるビンズオン新都市では、べカメックス東急がマンションなどを開発しており、中間層の人口が増えている。
ニトリは今後の計画について明らかにしていないが、最大消費地のホーチミン市周辺で出店を進めるとみられる。
■家具市場、年9%ペースで成長
ニトリは05年に首都ハノイ市でベッドやソファなど家具やインテリア製品の製造を開始し、17年には南部バリアブンタウ省で木製家具やインテリアなどの工場を稼働させた。両拠点ともベトナムの労働力を活用して生産し、製品は日本などに輸出する生産拠点の位置づけだ。15年にバリアブンタウ省の工場の着工式典に出席した似鳥昭雄社長(現会長)は「(販売拠点としては)中国と台湾への出店に注力する」として、ベトナムへの店舗展開は当面考えていないと述べていたが、その後のベトナム経済の発展で状況が変わった。
ドイツの調査会社スタティスタによれば、ベトナムの家具市場は向こう5年にかけて年率9%のペースで成長し、28年には22年の1.6倍の20億7,000万米ドルに達する見込みだ。外資では無印良品が20年に進出しているが、現時点で店舗数は7店舗。ニトリがライバルとみなすスウェーデンの家具大手IKEA(イケア)は未進出で、ニトリが先行すれば主導権を取る余地が残されている。
ニトリは10月時点で世界に約950店舗を出店しているが、うち日本国内が約800店を占めており、アジア市場の開拓を急いでいる。8月にタイ、9月に香港に1号店を開いており、11月後半に韓国での出店も決まっている。インドネシアとフィリピンにも進出計画があり、アジア域内の店舗を24年3月までに200店舗超に増やし、25年以降は海外で毎年300店ペースで出店する計画だ。