大分市が家島に津波避難用の人工高台整備 市内2カ所目、標高10メートル【大分県】

津波避難用の人工高台「家島命山」=大分市家島(大分市提供)
記念式典のテープカットで施設完成を祝う関係者=6日、大分市家島
大分市の津波避難用の人工高台(命山)

 【大分】大分市は、同市家島に津波避難用の人工高台「家島命山(いのちやま)」(標高10メートル)を整備した。大野川河口付近の同地域には緊急避難に適したビルが少なく、津波発生に気付くのが遅れた地元住民らの利用を想定する。6日は現地で完成記念式典があった。

 施設は臨海工業地帯近くの家島緑地内(市有地)に位置。土を盛り、山状に固めている。地面からの高さは約8メートル。三佐に続き、市内2カ所目の命山となる。

 市防災危機管理課によると、頂上部の避難スペース(約400平方メートル)は周辺の人口や緑地(公園)利用者数を踏まえ、400人が逃げ込める面積を確保した。防災資材を収納できるベンチや、照明、テント設営が可能な日よけを設置。防災倉庫もあり、飲料水や災害用トイレなどを備蓄している。階段かスロープで上る。

 家島地区は標高約2~4メートル。南海トラフ地震発生時は最大3.6メートルの津波が到来すると考えられる。一方、地区には高さなどの条件を満たした避難ビルが1軒しかないという。

 市は2019年に地元住民側からの要望書を受け、人工高台の整備を検討。21年に予算化し、22年8月~23年10月にかけて工事をした。工事費(総事業費)は約2億1500万円。

 6日の式典には、関係者約60人が出席。足立信也市長が「非常時は一刻を争う。日頃の訓練が重要になる」、家島自治委員の阿部邦彦さん(76)が「夢見た施設が出来上がり、自然災害に格段に強い地域になった」とあいさつした。代表者6人がテープカット。式後の見学会で、市職員が機能を説明した。

 家島命山の完成により、市内では現状、浸水想定区域内の避難先が懸念されるエリアはなくなったという。市防災危機管理課は「逃げ遅れた際は命山などを活用してほしいが、最優先は浸水想定区域外の高台へ逃げること。日頃から避難の場所やルートを確認し、非常時に備えてほしい」と話した。

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