「なんとなくタブー視されている感が…勇気がいる」高齢妊娠増で需要高まる出生前診断 窓口となる認定施設数に課題も

出産前に胎児の異常を検査する「出生前診断」をご存知でしょうか。高齢での妊娠・出産が増え、検査の需要が高まっていますが、詳しい情報が広まりづらく、検査を行う認定の施設も少ないのが現状です。出生前診断をめぐる静岡県内の課題を取材しました。

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「うちの場合は、陰性ですよと」
「ほっとしました」

女性が見せてくれたのは、出生前診断の結果です。新型出生前診断(NIPT)は、出産前に妊婦の血液から胎児の染色体の異常を調べる検査です。

<出生前診断の経験者>
「高齢出産なのでリスクが高い、事前に知っておくことのメリットの方が大きいと思ってやった」

女性は、37歳の時に妊娠し、静岡県東部の病院で出生前診断を受けました。しかし、周囲に経験者がおらず、詳しい情報を集めづらかったといいます。

<出生前診断の経験者>
「やっぱりなんとなくタブー視されている感があるなと思って、出生前診断をしたいと思った時に、すると選択するのも勇気がいる」

<静岡市立静岡病院産婦人科 堀越義正医長>
「これがNIPT(出生前診断)の資料です」

10月から日本医学会による認定施設となった静岡市立静岡病院です。新型出生前診断(NIPT)は、日本では10年前に導入され、妊婦の血液を分析し、胎児の染色体の異常を調べる検査で、ダウン症など3つの疾患が対象です。一般的な費用は20万円前後です。

こうした検査の需要が高まっている背景には、妊娠、出産の高齢化があります。ダウン症の確率は高齢の妊婦ほど高くなります。

ただ、担当する医師は、検査の内容や必要性などについて、丁寧なカウンセリングが重要だと考えます。

<静岡市立静岡病院産婦人科 堀越義正医長>
「本当にNIPTの検査で不安の払しょくが可能かどうか、検査が必要かどうかを患者の不安や思いを聞いて、それに見合う形で検査を提示している」

日本医学会は2022年、出生前診断について新たな指針を公表。これまでの「原則35歳以上」という制限をなくし、35歳未満も認められることになりました。

また、認定制度を変えたことで、検査を受けられる病院の数も急増しました。静岡県内では、2021年まで認定の病院は1か所しかありませんでしたが、2022年、6か所に増え、2023年、13か所になりました。しかし、検査需要に対して、まだ施設が少ないのが現状です。

<静岡市立静岡病院産婦人科 堀越義正医長>
「希望する妊婦には、確実に情報にたどり着く。受ける方が納得して検査を受けられるような確実な体制整っていれば、検査自体はどんどん広まっていくのが望ましい検査」

新型出生前診断というのは、どのような流れなのか、まず、夫婦でカウンセリングを受け、検査を受けるか判断します。

検査では、妊婦の血液に含まれる胎児のDNA断片を調べます。仮に陽性の場合は、羊水を採取して検査します。その結果を伝え、その後の判断を支援するという流れです。

<滝澤悠希キャスター>
「陽性だった場合のサポート体制が重要ですよね」

<坪内明美記者>
「わたしも以前、出生前診断を受けたのですが、検査を受けるかどうか、判断するための情報もまだ広まっておらず、どこに確認したらよいか、分からない人も多いのではと感じました」

取材した静岡市立静岡病院の堀越医師は、「出生前診断『ありき』という形ではなく、実際にどんな検査がいいのかという点から話すように心がけている」と話していました。

正しい選択をするためにも、窓口となる認定の施設が増えていけばと思います。

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