加盟社7割が中断 石川県航空機産業クラスター コロナの需要減、MRJ断念で

  ●好調な建機にシフト

 石川県内のものづくり企業20社で構成する県航空機産業クラスター「AC Ishikawa」の活動が下火になっている。コロナ禍に伴う航空機需要の減少に加え、2月に三菱重工業が国産初のジェット旅客機スペースジェット(旧MRJ)の開発から撤退したことで受注開拓の目的が薄れ、クラスター加盟社の7割が航空機向け事業を中断。建機向けなど好調な分野へのシフトを強めている。航空機産業は回復まで数年かかるとみられ、県内各社も曲がり角を迎えている。

 県航空機産業クラスターが設立されたのは2017年。当時は国産初の旅客機「MRJ」の開発が進められ、部品メーカーに対する国の補助金も手厚かったことから、県産業創出支援機構(ISICO)が成長分野と位置付け、新規参入や事業拡大、販路開拓を促す枠組みとして整備した。

 航空機部品を専門とするメーカーだけでなく、建設機械や工作機械、半導体製造装置向けを主力とする企業も参画。こうした企業は売り上げに占める航空機分野の割合が1~2割となっていたため、金沢工大や県工業試験場などが開発をサポートする体制とした。

 クラスターはフランスをはじめ国内外の航空見本市にブースを出展したほか、部品加工に必要な国際認証の取得を進めてきた。

 ただ、コロナの感染拡大で航空機需要が低迷し、風向きが変わった。20年にシンガポールのエアーショーに出展したのを最後に活動は停滞。現在は国の支援制度をメールで加盟社に周知する程度にとどまっている。

 ISICOによると、加盟社の約7割が航空機向けの製造を中断。建機向けなど好調な分野に専念する企業が多いという。担当者は観光の動きが活発化し、メンテナンスの需要は徐々に回復していると指摘。その上で「航空機需要がコロナ前の水準に戻るまで少なくとも3~5年はかかるだろう」と話した。

 実際、加盟社の中には航空機分野の売り上げが全体の1%未満にとどまり、加工設備を別の機械部品の製造に回すなどして稼働を維持しているところもある。同社の担当者は「航空機の生産台数が戻ったり、新機種の製造が始まったりすれば再び動き出すかもしれないが、当面は難しそうだ」と見通した。

  ●単独で増産の企業も

 一方、着実に増産を進めているのは航空機のエンジン部品を手掛けるTANIDA(タニダ、かほく市)だ。20年にフランスの大手エンジンメーカーサフラン社と部品の長期供給契約を締結。昨年7月に開設した本社工場は今年6月に全ての設備が整い、金沢工場と合わせてフル稼働が続く。

 担当者は、売り上げ全体に占める航空機の比重について「今年は2割から3割程度まで上昇するだろう」と語った。

© 株式会社北國新聞社