特殊詐欺使用5口座凍結 県警だまされた振り新作戦

詐欺グループが運用しているとみられるラインのグループ。投資話を持ち掛けられる

 富山県警が特殊詐欺被害撲滅に向け新たに開始した交流サイト(SNS)上でのだまされた振り作戦で、詐欺グループが現金の振込先に使っていたとみられる5口座を凍結させたことが8日、県警への取材で分かった。県警によると同様の捜査手法での口座凍結は全国初とみられる。作戦開始から1カ月余りで成果が出てきており、県警は今後退職職員への協力を本格的に求め、詐欺グループの摘発や被害防止を目指す。

 だまされた振り作戦は、詐欺の電話がかかってきた人にだまされた振りをしてもらい、犯人をおびき出して逮捕する捜査手法。近年は通信アプリ「LINE(ライン)」などのSNSで接触してくるケースが増えて

いることから、富山県警は10月に特殊詐欺撲滅のプロジェクトチームを設立し、「SNS版だまされた振り作戦」を始めた。

 作戦は、警察官の家族や退職職員のSNSに詐欺グループとみられるアカウントからメッセージが届いた際、県警に連絡して開始する。捜査員の指示を受けながら数日間にわたってやり取りを続け、情報を引き出す。

 県警組織犯罪対策課によると、県警は8日時点で複数の特殊詐欺グループとみられる相手からの情報を確認し、現金の振込先として示された5口座を金融機関を通して凍結した。犯人側からは株、外国為替証拠金取引(FX)、仮想通貨など金融商品への投資を持ち掛けられた。

 作戦は長期間にわたって犯人側とやり取りをする必要があるため、現役の警察官と職員、その家族を中心に捜査協力を求めている。退職職員にも協力を要請しており、県警は10月下旬に退職職員約1800人でつくる警友会全14支部の代表者を対象に説明会を開いた。西田隆会長(70)は「県民の大切な財産を守るため力になりたい」と話した。

 同課によると、県内で1~9月に発生した特殊詐欺、投資詐欺、国際ロマンス詐欺を合わせた被害件数は前年同期比約2.2倍の260件、被害総額は約2倍の8億1165万円だった。宮﨑祥一次席は「口座を凍結することで将来の被害を防ぐことにつながる。ささいな情報でも構わないので情報提供をお願いしたい」と話した。

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