「今は毎日がアウトドア」銀行員辞め来日した英国人、コロナ禍機に林業に飛び込む

「毎日、同じ日はない」と林業の仕事に魅せられたリチャードさん(高島市朽木地子原)

 滋賀県高島市朽木地子原の山中のスギ林。木を倒す方向をしっかりと確認し、チェーンソーで根元近くに丁寧に切れ目を入れ、手際よく切り倒す。同市森林組合の技師ヒートン・ダグラス・リチャードさん(33)=同市マキノ町=は、危険を伴う作業にも「木は一本一本、同じではなく、作業も同じということはない」と林業の仕事に魅せられている。

 英国イングランドのピーターバラ市出身。カーディフ大で哲学を学んだ後、銀行に務め、顧客対応を担当していた。「ほぼ同じことの繰り返し」の日々に面白さを感じなかった。「元々、違った文化や言語に触れたかった」。日本で先に英語講師をしていた知人の勧めもあり、2016年、迷わず来日した。

 英会話教室の講師を関東で3年、その後も京都府長岡京市を拠点に京都や神戸、大阪で2年勤務した。転機は新型コロナウイルスだった。対面授業が減り、リモートが増えた。ストレスもたまっていった。

 「外で働きたい」という気持ちが高まり、自然の多い所に家を求め、妻の真生さん(36)と21年夏、高島へ移住した。ほぼ同時にハローワークで高島市森林組合の求人を見つけた。「その土地の人と日本語を話して働きたかった。技術も経験も得られる」と9月から林業の世界へ飛び込んだ。

 今、50年以上経過したスギやヒノキを切って運び出す「搬出間伐」の作業に当たっている。チェーンソーで木を切る伐倒、4メートルの長さにそろえる造材、ワイヤを重機につないで山から木を引き出す集材を手掛ける。

 思った方向に木が倒れず、何とか難を逃れたこともあった。「斜面の作業が多く、滑落事故もありうる。チェーンソーでけがをするかもしれない。常に危険と向き合っている」。山の中で同僚と無線で連絡を取り、万全の注意を払う。「作業は毎日違って面白い。ずっと続けていきたい」と思いを込める。

 アウトドアが趣味。自宅近くの琵琶湖から見る伊吹山や竹生島の景色が気に入っている。日本では東京の奥多摩や京都市と大阪府の境にあるポンポン山をハイキングした。「今は毎日がアウトドア」と笑顔を見せる。

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