長崎から雲仙へ 欧米人「避暑」の旅 関係者らが追体験 バークガフニさん解説も

れんが造りの門柱が残る千々石ホテル跡地前で解説するバークガフニさん(左から3人目)=雲仙市千々石町

 空調設備がなかった20世紀前半、夏を涼しく過ごせる雲仙は欧米人にとって人気の避暑地。長崎の外国人居留地研究の第一人者で長崎市グラバー園名誉園長、ブライアン・バークガフニさん(73)が、長崎から雲仙までの当時の道のりを解説するツアー「The Road to Unzen」の体験会があり、観光関係者ら15人が、旅の様子を追体験した。
 バークガフニさんは今春、著書「欧米人が歩いた 長崎から雲仙への道」を刊行。同書によると、当時は長崎・出島-小浜の海路があり、小浜からは徒歩のほか、馬やかごなどを使った。雲仙には外国人向けの旅館が増え、ゴルフ場やテニス場、テニスコートなどができた。小浜に宿泊施設が建ち並び、千々石にもホテルが建てられた。
 同書の内容を中心に、インバウンドの本格的な回復を図る観光庁の体験コンテンツ「観光再始動事業」の一環で、雲仙観光局がこのツアーを事業化。12月中旬から予約開始する。
 体験会は10月30、31日にあり、参加者は長崎市の長崎出島ワーフを出発し茂木まで三輪自動車「トゥクトゥク」で移動した。銘菓を楽しむなどした後、タクシーで旧小浜鉄道(1927~38年)の駅跡など4カ所で下車しながら小浜へ。雲仙市千々石町の千々石ホテル跡地では、バークガフニさんが「欧州建築物の機能と、縁側など日本の伝統美を供えた木造2階建て」と語り、当時の面影をしのんだ。

 同市小浜町の小浜温泉街では、温泉蒸しなどで島原半島の豊かな食を堪能した。史料を基に再現したいす付きの竹製かご「チェアかご」も登場。バークガフニさんが「女性が雲仙へ快適に登るために小浜で誕生した」と説明し、法被姿の男性4人が参加者を担ぎ約400メートルを速足で運んだ。 鹿児島市の旅行会社に勤めるフェララ・ロザリーさん(24)は「乗り心地は快適。小浜の景色を高いところから楽しめてお姫さま気分」と喜んだ。

参加者を乗せたチェアかご=雲仙市小浜町

 一行はタクシーで雲仙温泉街へ到着し宿泊。翌日は温泉街から車で数分の白雲の池キャンプ場で、小型ボート乗船や野外レストランでの昼食、雲仙茶のお茶会などを満喫した。
 九州観光機構の花田政年地域連携室担当部長は「当時を追体験できた。歴史的な場でバークガフニさんから直接、学術的な解説を聞けて格別だった」と好感触。バークガフニさんは「天然のクーラーがあり自然豊かな雲仙は、当時の欧米人にとって天国のようでバカンスに最適な場だっただろう。思いをはせてほしい」と話した。

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