【リニア】環境影響めぐる国有識者会議の報告書案了承受け…川勝知事「非常に残念」(静岡県)

静岡工区の着工に向けた議論が難航するリニア新幹線問題。7日、環境への影響について議論する国の有識者会議が報告書案を了承したことを受けて、川勝知事は10日「非常に残念」と話しました。

リニア中央新幹線のトンネル工事に伴う環境への影響について議論する国の有識者会議では、「水辺の生物」や「高山植物」に与える影響など3つの論点について議論が行われていて、7日の会議では、1年5ヵ月の議論をまとめた報告書案が了承されました。

報告書案では「JRの環境対策は適切である」として、今後はJRの計画をもとに、影響予測やモニタリングを継続的に行い、必要に応じて対応を見直すことで影響の最小化を図ることなどが記載されています。

(JR東海 宇野 護 副社長)

「かなりいいものがまとまった認識はあるが、この話はこれで終わりではない。これからが本番だという気がしている」

一方、県は報告書案について「生物の調査が不足している」などとして、議論の継続を求めていましたが、国の有識者会議はこれで終了となる見込みで、県の主張は退けられた形となりました。

これについて、9日の会見で、川勝知事は「非常に残念だ」と話しました。

(川勝知事)

「当初の目的であったJR東海への具体的な助言や指導まで組み込まれていない。十分な議論がないまま取りまとめられることは非常に残念」

その上で、懸念している課題については、今後、県の専門部会で議論していく考えを示しました。

(川勝知事)

「県の専門部会に持ち帰ってJR東海と公開の場で議論して、関係者に理解を得て、初めて有識者会議の議論も生かされる。(国の)有識者会議の議論は尊重するが、それに従うと言ったことは一度もない」

(スタジオ解説)

静岡工区の着工に向けた課題について整理します。

現在議論されている課題は大きく分けて2つあります。1つ目は、リニア工事に伴う、大井川の水量減少が懸念される「水問題」です。そして、2つ目がVTRで紹介した南アルプスの環境保全です。こちらは、水生生物や高山植物への影響や発生土置き場の安定性など論点が多岐に渡ります。

この環境保全策について、7日、国の有識者会議での議論が終了し、今後の対策などをまとめた報告書案が了承されました。国の有識者会議は「JRが示した対策は適切である」と評価する一方で、県は、JR東海が現場が危険な場所にあり調査が難しいとしている「沢の上流域の生物調査も行うべきだ」と主張するなど、厳しいレベルでの調査を要求しています。

これに対し、会議の中では、中村座長が「不確実性の中で対応していくことが大事で、議論が足りないとは思っていない」と、細かい調査や対策ばかりを求めてきた県の姿勢に、くぎを指す場面もありました。今後、環境保全の議論は、県の専門部会で行われる予定ですが、県はどこまで議論をするか明確にしていないため、県での議論は長引くことになりそうです。

© 株式会社静岡第一テレビ