〈奥能登国際芸術祭2023〉地震の痕跡をアートに 廃材使い「儀式の広場」 神木でブリ起こし表現

奥能登地震の廃材を木柱に活用した作品=珠洲市狼煙漁港

 12日まで珠洲市全域で開催中の奥能登国際芸術祭2023(北國新聞社特別協力)では、5月の奥能登地震で被災した家屋の廃材や、風雨で倒れた神社の神木(しんぼく)を活用した二つの作品が展示されている。一度捨てられようとした木に、作家が新たな命を吹き込んだ。災害から再生したアート作品は、鑑賞者の心をとらえている。

 地震で出た廃材は、狼煙(のろし)漁港(狼煙町)で公開されている「アイオロスの広場」を構成する木柱に使われた。東京の音楽家小野龍一さん(29)が、古代の儀式空間をイメージして制作した。

 作品は24本の木柱と古びたピアノを糸で結び付け、鍵盤や糸をはじくと音色を奏でる仕組み。当初は、木柱として流木などを使用する考えだったが、小野さんは「6月に下見で珠洲を訪れた時に見た地震被害が衝撃的だった。被災者のいろんな思いが宿った廃材があると聞き、何とか生かしたいと考え直した」と話す。

 芸術祭に訪れた金沢市の舞谷和恵さん(76)は「アイオロスの広場」の木柱に見入り、「地震がなければまだ使われていただろう。間近で見ると、エネルギーを感じる」と感動した様子で話した。

 神木だった倒木は大谷神社(大谷町)に植えられていた樹齢100年以上のタブノキで、旧本(ほん)小(三崎町本(ほん))で展示中の作品「みえないエネルギー天と地と海との間に」で使われた。

 長年の風雨で2年前に倒れた神木を兵庫県出身の彫刻家植松奎二(けいじ)さん(76)が目にし、作品に生かすことにした。数本に切った神木は天井からつり下げたヒノキと合わせ、北陸特有の冬の雷「ブリ起こし」を表現した彫刻に生まれ変わった。大谷神社の亀山國彦宮司(64)は「最初聞いた時は驚いたが、神木の活用を願っていただけに感謝の思いでいっぱい。住民としても誇らしい」と語った。

大谷神社の神木が用いられた作品=珠洲市三崎町本の旧本小

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