●乗り合いサービスやバス、タクシー 利便性高め住民の足維持
朝日町は年度内にも、住民が運転手となるマイカー乗り合いサービス「ノッカル」やバス、タクシーなど全ての地域交通の利用予約をスマートフォンからできるシステムを導入する。公共交通を利用した町民に町内の飲食店やスーパーなどで使える地域通貨ポイントを付与する制度も整える。政府がマイカーを使った公共交通「ライドシェア」を検討するなか、町は全国に先駆けたモデルとして利便性を高めていく。
対象となる町内の交通機関は、2021年に開始した「ノッカル」のほか、まちバス、町内と北陸新幹線黒部宇奈月温泉駅を結ぶバス「まちエクスプレス」、町内唯一のタクシー事業者「黒東自動車商会」となる。
予約システムには通信アプリ「LINE(ライン)」を使用する。現在はノッカルのみ対応しているが、早ければ年度内にタクシー、まちエクスプレスを加える。定時で運行しているまちバスについては、遅延・運行情報をLINE上で確認できるようにする。来年度以降には鉄道の時刻表も組み込み、駅までの移動手段を案内できるようにしてサービスを向上する。
マイナンバーカードを利用した運賃支払いの新サービスも導入。利用に応じて町内で使える地域通貨ポイントを付与することで、公共交通と町内の飲食・小売店双方の利用を促す。
町によると、ノッカル、まちバスなど町営公共交通全体の2021年度の運行経費は4219万円だった一方、運賃収入は518万円にとどまり、大幅な赤字となっている。町民1人当たりの移動に1200円の赤字が出ている状況という。利用者減少により、収支は悪化傾向にあるため、町は新たな利便性向上策で利用促進を図ることにした。
今後は、収支改善に向けた新たな資金調達として、町内会や企業などの協力、協賛、基金設立なども検討する。町担当者は「公共交通は使わないと衰退し、みんなが使えばもっと便利になる。町民一人一人が自分ごととして考え、維持・活性化に関わるよう促したい」と強調した。
●助け合う公共交通重要 富大学術研究部都市デザイン学系特別研究教授 中川大氏(朝日町出身)
富山県は「幹、枝、葉」の公共交通と言われている。地域拠点間を結ぶ鉄軌道を「幹」、デマンド交通など地区内移動交通を「葉」、両者をつなぐバスを「枝」に見立て、「葉」の部分ではノッカルのようにみんなで助け合う公共交通が重要だ。朝日町の取り組みは、人とのふれあいの中で育てられている取り組みであることが良いところだと感じる。
ノッカルは全国的に注目されている取り組みであり、まちバスも運行が評価されて国土交通省の地域公共交通優良団体大臣表彰を受けている。両者を組み合わせた試みは、全国的にみても進んでいると言える。地方の公共交通は連携が必要。優れた取り組みだと思う。(談)