特養と老健は初の赤字、22年度 物価高、介護事業に影響

厚生労働省が入る中央合同庁舎

 厚生労働省は10日、介護サービスを提供する事業所の2022年度の経営実態を調査した結果を発表した。利益率(収支差率)は特別養護老人ホーム(特養)がマイナス1.0%、介護老人保健施設(老健)が同1.1%で、介護保険制度が始まって以降、初の赤字。物価高騰が影響した。全業態の平均利益率は2.4%で前年度から0.4ポイント悪化。23年度の経営状況はさらに厳しくなっているとみられ、政府は事業所にサービスの対価として支払う介護報酬を引き上げる検討に入った。

 調査結果は介護報酬を改定する際の基礎資料となり、報酬の改定率は政府が年末に決定する。報酬を増額する「プラス改定」で経営の安定や介護職の賃上げにつなげ、深刻化する介護現場の人手不足を緩和する狙い。

 ただ政府は少子化対策に必要な財源の一部を社会保障費の抑制で賄う方針を示しており、改定を巡る調整の難航も予想される。

 厚労省によると、一般企業など全産業の平均利益率(22年度)は6.2%で、介護事業所とは大きな開きがある。

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