社説:ガソリン補助 一律支援の見直し必要

 緊急対策のはずが、効果や出口も不透明なまま巨額の公費をつぎ込み続けていいわけがない。

 政府は今月打ち出した総合経済対策で、ガソリン代や電気・都市ガス料金を抑える補助金を来年4月末まで延長するとした。

 ガソリン補助は、レギュラー1リットル当たりの全国平均で175円程度まで下げる今の制度を継続する。

 同じく今年末が期限だった電気・都市ガス分の補助と合わせ、延長を賄う原資約8千億円を、今の臨時国会に提出する本年度補正予算案に盛り込む方針という。

 昨年1月に始めたガソリンへの補助は、6回目の延長となる。既に6兆円超を予算措置しており、電気・都市ガスの補助にも約3兆円を充てている。

 岸田文雄首相は、ウクライナ危機以降の資源価格高騰への「激変緩和」措置と説明してきた。だが、産油国の減産や円安もあって相場下落が見通せないまま、ずるずると延長を重ね、際限なく国民負担が膨らんでいく状況だ。一度始めた補助金をやめられないという悪弊の最たる例といえよう。

 確かに生活や仕事を車に頼る人や企業にとって、ガソリン補助は一定の負担軽減になっているだろう。だが、食料品など幅広く値上がりする中、エネルギーに偏った支援は、車を使わない人らとの公平性を欠くのは否めない。

 価格抑制の効果も疑問視されている。会計検査院の調査で、今年3月までの補助金額より価格抑制額は101億円下回り、小売価格に十分に反映されていないとされた。国が業界団体に委託したガソリン販売店のモニタリング調査(上限62億円で再委託)も効果や補助単価の分析・検討に使われていないと無駄遣いを指摘された。

 こうした経済対策は政権浮揚を狙ったバラマキ色が拭えず、詳しく検証し、必要度や実効性について徹底した国会審議が必要だ。

 補助金が市場原理をゆがめる弊害も忘れてはならない。

 通常は値上がりすれば消費が節約され、値段を下げる作用が働くが、公費で市場価格を抑え込むことで需要が温存される。昨年度の国内ガソリン販売量は7年ぶりに前年度より増えており、脱炭素の流れにも逆行している。

 一律の補助金でなく、エネルギー価格高騰の痛みが大きい低所得層や中小の関係事業者に絞った負担軽減や支援策に転換すべきだ。

 化石燃料への依存度低減や円安是正をはじめ、構造的な改革も欠かせない。

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