カニ初物登場に沸く 近江町市場店頭にずらり コウバコ入荷増2割安く

店頭に並べられた初物の加能ガニ=10日午前10時、金沢市の近江町市場

  ●しけで3日遅れ

 9日に石川県内の漁港で水揚げされた初物の県産ズワイガニが10日、県内の鮮魚店やスーパーの店頭に並んだ。金沢市の近江町市場では、価格は雄の「加能ガニ」は平年並みながら、入荷量が増えた雌のコウバコガニは2割ほど安くなった。しけで3日遅れとなった「冬の味覚の主役」の登場に、待ちわびた地元客や観光客は次々と手を伸ばし、市場は活気に包まれた。

 「さあ、カニ今日から」「いきが良いの揚がっとるよ」。近江町市場で店員の威勢のいい呼び声が響いた。市場内の鮮魚店「大口水産」では、入荷量が平年に比べて若干少なかった加能ガニが平年並みの2500~2万5千円だったのに対し、コウバコガニは例年より2割ほど安い300~3千円で売られた。

 荒木優専務は「遅れた分、待ちわびた人が多く、いつも以上に、にぎわっている。実入りも良く、品質は上々」と話し、次々と訪れる客の対応に追われた。

 コウバコを10匹買った金沢市金石松前町の会社員由下貴大さん(50)は「初物を食べないと冬を迎えた気がしない。北海道産の方が安かったけど、やっぱり地物を食べたい」と笑顔を見せた。

 積み上がった初物カニを熱心に品定めする観光客も見られた。毎年、この時期に妻と近江町市場を訪れている愛知県大治町の会社員森下進也さん(38)は「金沢のカニはどこよりもおいしく、価格も手頃。ずっとこの日を待っていた」と声を弾ませた。

 県内の各漁船が厳選したカニの価格を競う「蟹―1(かにわん)グランプリ」に出品された加能ガニも店頭に並び、その大きさと7万5千円の価格に見物客のため息が漏れた。

 10日早朝には、金沢市中央卸売市場で初競りが行われた。競りに先立ち、金沢市の村山卓市長が「皆さんにたくさん売ってもらって、多くの市民、県民、観光客に味わってもらいたい」とあいさつした。

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