W杯男子日本代表12人の今——国内組ウイング編(馬場雄大、原 修太、比江島 慎、西田優大、吉井裕鷹)

FIBAバスケットボールワールドカップ2023の日本代表ロスターでウイングとしてプレーした6人のうち、現在国内でプレーしているのは馬場雄大、原 修太、比江島 慎、西田優大、吉井裕鷹の5人。彼ら5人について、11月5日時点までのデータを参考にそれぞれどんなワールドカップ効果が表れているのか、いないのか、見ていこう。

馬場雄大(長崎ヴェルカ)

©FIBAWC2023

馬場はワールドカップで痛めた肩を保護するテーピングが痛々しい姿のまま、新天地の長崎でコートに戻っている。出場時間が平均23分52秒と比較的短めな中での平均13.9得点、3.6リバウンド、2.1アシスト、1.2スティールという数字には、やはり能力の高さを感じずにはいられない。特筆すべきものの一つには70.7%という2Pフィールドゴール成功率の高さもある。トランジションやハーフコートゲームでのリムアタックは、ファンにとっては見応えがあるし、チームにとっては頼りがいがあるに違いない。

馬場は長崎において、リーダーシップを感じさせるコメントも残している。チームのポテンシャルに関する質問に対し、「優勝を狙えるでしょう」と語る姿は、もちろん本音だろうが、そう話すことでチームを鼓舞する意図も伝わってきた。世界の舞台で勝ったことで、内面的にも一段成長できたのではないだろうか。

原 修太(千葉ジェッツ)

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ワールドカップ後に両足関節三角骨障害と両足関節後方インピンジメント症候群の診断を受けた原は、9月上旬に手術を受け、チームを離脱した状況で開幕を迎えた。戦列復帰は10月28日のファイティングイーグルス名古屋戦で、11月5日時点ではまだまだ万全というにはほど遠い。コンディションを整えながら焦らず中盤戦から終盤戦にかけて本来のパフォーマンスを取り戻してくれることを期待したいところだ。

個人成績では平均6.0得点、2.0リバウンド、1.5アシスト、0.3スティール、0.5ブロックといった数字が並んでいるが、主要な項目すべてに数値が入っていること自体が、手術から2ヵ月経っていない時点では前向きに捉えるべきことではないだろうか。リバウンドに関しては昨シーズン(1.8)を上回っており、身体的な強さを生かして奮闘している姿が浮かぶ数字でもある。

比江島 慎(宇都宮ブレックス)

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ワールドカップで日本代表の最年長プレーヤーだった比江島は、大会6位に入る3P成功率57.1%という勲章を手にした。この成功率はアメリカ代表のNBAスター、ミケル・ブリッジズ(ブルックリン・ネッツ所属で昨シーズンは渡邊雄太のチームメイト)よりも高かったのだ。今シーズンのBリーグにそんなプレーヤーがいるということ、大きな成果に満足することなくこれまで同様のハイレベルな活躍を披露し続けていることは、宇都宮のファンならずとも誇らしく思えるのではないだろうか。

平均11.5得点は昨シーズンから1.5ポイント下降しているが、ここには3P成功率が現時点ではいまひとつ(34.1%で昨シーズンの43.4%より9.3ポイント低い)なことが影響している。しかし2Pフィールドゴール成功率62.5%は昨シーズン(46.3%)から16.2ポイントと大幅な上昇。シーズンが進むにつれロングレンジの切れもついてくるのではないだろうか。

西田優大(シーホース三河)

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ワールドカップでの西田は、8~9人のローテーションをサポートする立ち位置で平均出場時間2.4分。十分な機会がなかったことで能力を発揮しきれなかった側面もありそうだ。ただ、それは現状として受け止めなければならないだろう。西田はトランジションで良いプレーを見せ得点機を作ったが、3Pショットが決められなかった(3度のアテンプトすべてがミスに終わった)。もしも1本決まっていたら印象は異なり、出場機会が増えていたかもしれない。

そんな西田がBリーグの序盤戦で、3Pアテンプトを昨シーズンから大きく増加させ(平均3.6本→5.2本)、成功率も38.9%から42.6%に上昇させている。積極的に打てる場面で打ち、ロングレンジゲームに磨きをかけることは、機会が減り1本の重みが増すかもしれない代表活動での決定的な仕事につながる可能性もあるだろう。もちろんシーホース三河での勝利にも、引き続きそんな西田の活躍が欠かせない。

吉井裕鷹(アルバルク東京)

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ワールドカップでの吉井は、平均出場時間が20分を越えた日本代表メンバー5人のうちの一人であり、突出した数字こそ残さなかったもののフィジカルで闘志あふれるディフェンスでチームに貢献していた。しかし、序盤戦から好調なアルバルク東京はプレーヤー間の競争も激しく、Bリーグでは出場時間が昨シーズンの約3分の2となる10分44秒に減少。平均1.7得点、1.2リバウンド、0.3アシスト、0.2スティールはいずれも昨シーズンを下回る数値となっている。

ただし、機会が減った分、フィールドゴールの決定力は2Pショット(昨シーズン43.4%に対し今シーズン44.4%)でも3Pショット(同28.7%に対し50.0%)でも上昇させている。見る側としては、もっともっと期待したい。それでも、ショット精度の向上と、現状の結果としてチームが好調であることは、吉井の存在意義を示す一つの要素ではあるだろう。

ウイングのプレーヤーには年々高度な柔軟性と緻密さ、身体的な強さが求められるようになっており、競争も激化している。実戦で外国籍プレーヤーを前にして、ピボット一歩だけでダンクに持っていける身体能力や、ビッグマンにもポイントガードにもスウィッチ・ディフェンスで対応ができ、かつ大きなプレッシャーがのしかかる中で3Pショットを40%以上の確率で決めきるような能力となると、ほとんど人間離れしているようにさえ思えるが、Bリーグでも日本代表でもそういったことが語られているのが現状だ。毎試合の勝負、代表選考の勝負を左右するのが、そうした能力の最後の1%、最後の1mm、その差を埋める汗一滴を振り絞ることができるかどうかだと思うと、彼らの全員を心から激励したくなるというものだ。

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