柔の道が険しく “お家芸” 柔道が直面する危機 中学校で部員が激減 “一本” 取るための自治体の対策は

オリンピックや世界選手権で金メダリストを続々と輩出してきた「柔道」…。しかし今、全国的に競技人口が激減しています。なぜ減るのか? ではどうするのか? 教育現場でも対策が始まりました。

全国の運動部に入っている中学生の競技別生徒数の推移を見ると、目立って減っている競技は以下の3つです。
▽ソフトテニス ▽サッカー ▽軟式野球
とはいえ、今でも10万人以上はいます。

一方、もともとの生徒数が10万人以下だったこのグループで、3割ほど減っているのが剣道と柔道です。このままでは、多様なスポーツが楽しめなくなるとして、広島市が対策に乗り出しました。

全国大会優勝の強豪校でも抱える不安

広島市にある中高一貫校・崇徳中学の柔道部は、23年度の全国中学体育大会で、団体で3位、90キロ級では優勝者を出すなど、全国でも有数の強豪校です。

現在の部員は7人。部員数が25人の高校生と一緒に週6日で練習しています。

柔道部員(中学生)
「新しい技が決まった時とか、楽しいです」
「強い先輩を投げた時に気持ちいいな、楽しいなって思ったりします」

部員は全員、柔道をやるためにこの学校を選んで進学しました。

広島市南区から通学する柔道部員(中学生)
「この学校のOBの人が自分のあこがれの選手で、ここに来て自分も強くなりたいと思ったからです」

呉市から通学する柔道部員(中学生)
「中高一貫っていうことなので、自分が中学3年生になっても、高校生の強い先輩方と練習ができるからです」

この学校では人気の柔道部ですが、全国的な競技人口は年々減っています。

特に広島での減少は顕著で、広島市内の中学校の部活動で「柔道部」に在籍する生徒数の推移を見ると、今やピーク時の4分の1の66人しかいません。

少子化で、全体の人数が減っているとはいえ、その減少率はほかの競技に比べて群を抜いています。それが進学先選びに影響したという部員もいます。

江田島市から通学する柔道部員(中学生)
「地元の中学校は、柔道部員が2人とか3人とかで少ない」

広島市安芸区から通学する柔道部員(中学生)
「(Q.地元の学校では柔道ができない?)できない。柔道部がないから」

地区大会の参加校が年々減っていくことは、強豪校にとっても良いことではないそうです。

崇徳学園柔道部 加美富章 監督
「相手が少ないと、同じ感覚でしかできない。試合になったとき、タイプの違う相手とやったときに、勝つ可能性が下がってくる、難しくなってくるんですね」

自治体が競技人口の確保に向けた研究会を立ち上げ

22年にわたって、崇徳中学・高校の柔道部を指導する加美監督は、柔道部員の減少には、体制的な理由も大きいと話します。

崇徳学園柔道部 加美富章 監督
「働き方改革で指導者の方の時間の制限とか、安全配慮とかいった面で、かなり指導するのは難しくなっていると思います」

広島市では、このままでは、競技種目の多様性が損われるとして、研究会を設立。特に部員数の減少率が顕著な柔道と剣道について効果的な対応策を検討することになりました。「部活の地域移行」と平行して、競技人口の確保に取り組みたい考えです。

9月には、市の主催で、初心者向けの親子柔道教室も開催されました。参加した28人の子どもたちが投げたり、投げられたりを初めて体験しました。

参加した子どもたち
「受け身をとるのが上手にできて、すごく楽しかった」
「またやりたい。かっこよくなりたい」
「(今後も)少しやってみたい。投げたりしたりする種類が何個も何個もあるから知ってみたい」

保護者たち
「身体が小さいので柔道をして身体を大きくしたいのと、あとカゼを引きやすいので強くなるかと思って」
「柔道の受け身が日頃にも生かせるって聞いて、ぜひ生活の中にも取り込めたらいいなって。よく転ぶので、子どもが」

こういった体験を子どもの頃に味わうことで、柔道をその後の人生の選択肢に加えてほしい…。関係者の願いです。

広島県柔道連盟 花本幸次 理事長
「親子教室のようなイベントを行ったり、連盟もアピールして、柔道を続けてほしい、または始めてほしいということを今からも進めていきたい」

少子化や教員の働き方改革もあり、単純に中学校の柔道部を復活させることは難しいのが現状です。

しかし、「地域の指導者に学校に来てもらって指導」や「地域に母体を作り、複数の学校から子どもたちが参加」など、さまざまな自治体で取り組みが始まっています。単に強くなるためだけでなく、子ども達がいろんなスポーツにチャレンジできる環境を整えるためにも考えていく必要がありそうです。

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