円珍の生涯や関係文書の価値語る ユネスコ「世界の記憶」記念して講演 滋賀・大津

円珍の生涯や円珍文書の価値を語る三井寺の福家長吏(大津市浜大津2丁目・市立図書館)

 大津市の三井寺が所有する智証(ちしょう)大師円珍の関係文書が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」に登録決定したことを記念した講演会がこのほど、市立図書館(浜大津2丁目)であった。同寺の福家俊彦長吏が円珍の生涯や文書の価値を伝えた。

 福家長吏は、円珍が中国・唐に渡って仏道修行を重ね、帰国後に三井寺の初代長吏となった生涯を紹介した。人となりについては「強い霊感の持ち主だった逸話が残るほか、亡くなる朝までお経の注釈書に手を入れていたと伝えられ、勉強熱心でもあったようだ」と話した。

 文書を「仏教の教義だけでなく、当時の逸話を伝え、仮名の変遷の歴史も分かる貴重な史料だ」と評価。文書が残ったことに関して「寺は中世に何度も焼き打ちに遭ったが、時々の弟子たちが命がけで守った成果だ」と強調した。

 読書週間(10月27日~11月9日)にちなむ催しとして同図書館が5日に開き、市民ら約50人が参加した。昨年から文書の修繕に携わる坂田墨珠堂(大津市)の坂田さとこ社長(63)が、補修の仕方を解説する講話もあった。

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