<ライブレポート>ネッド・ドヒニー、ウェスト・コーストの暖かさを感じさせた5年ぶりの来日公演

ネッド・ドヒニーの5年ぶりとなる来日公演が、11月10日からビルボードライブ東京にてスタートした。本稿では、初日の東京公演・1stステージの模様をお届けする。

ウェスト・コーストを代表するシンガー・ソングライター、ネッド・ドヒニー。石油王たる名門財閥に生まれた彼は10代の時、ただの御曹司ではなく、アーティストとしての自分を証明するため家出したという。ソウルやファンクなどを取り入れたネッドの音楽は、まさにこの反逆的なエピソードと裕福な育ちが融合した、いい意味で優雅な放蕩だと言えるだろう。1976年のセカンド・アルバム『Hard Candy』は、AORの名盤として評価され、リリース40周年を記念した再現ライブをビルボードライブで行ったことも大きな話題となった。

定刻を迎えると、バンドメンバーのビル・スタンウェイ(Key.)、メルヴィン・リー・デイヴィス(Ba.)、マイク・ホワイト(Dr.)スムドゥ・ジャヤティラカ(Cho.)、アンディ・ケイン(Cho.)に続いてネッドがステージに上がった。拍手と歓声の中、ネッドがアコースティックギターを抱えて客席に向けて挨拶。入念にバンドメンバーと確認したあと、メルヴィンのベースイントロと共に「Sing to Me」で幕を開けた。

バンド編成によるパワフルなサウンドでオーディエンスを魅了すると、キーボードとバックコーラスがアクセントとなった2曲目「I've Got Your Number」を披露。そしてネッドがアコースティックギターをエレキギターに取り替えて「Too Late For Love」へ。数曲をエレキギターで奏でた後、再びアコースティックギターに持ち替え「Postcards From Hollywood」「The Devil In You」と、メロウな空気で会場を包み込んだ。

すべての曲間で緻密にチューニングし、「チューニングを見たい人はいないよね」と自虐気味なジョーク口にしたネッド。雑談のように客席に話しかけながら、ネッドは「好きなことをやらせてくれてありがとう」と感謝の気持ちを述べ、温かい拍手の中で「Perish the Thought」へとライブを進めた。続いてヘイミッシュ・スチュアートとのエピソードを語ると、前回の来日時に2人で共演した「Whatcha Gonna Do For Me」を披露。オーディエンスも体を揺らし手拍子を打ち鳴らすなど、ネッドの音楽の世界に思う存分没頭していく。「ごめんね、時間もないんだ。ここは日本、70分は70分だ。しかしこの曲はやらなくちゃいけないよね」と冗談を交えながら、本編ラストへ。「Get it Up for Love」のイントロが響き始まると盛大な拍手と歓声が送られ、会場の温度がは最高潮に達した。

拍手で迎えたアンコールでは「When Love Hangs in The Balance」を披露。都心の夜景を背景に、叶わない恋を描いたセンチメンタルなバラードを歌い終えたネッドは、バンドメンバーと共に深く一礼してステージに後にした。秋を飛ばして、まるで冬のような寒い夜空のもと、開催されたネッドの来日公演。彼のステージは、そんな寒い東京に、夏への近道を切り開いてカリフォルニアの暖かな木漏れ日を届けてくれたようだった。なお、ネッド・ドヒニ―の来日公演は11月13日(月)ビルボードライブ大阪でも開催される。

Text: Ian Li
Photo: Masanori Naruse

◎公演情報
【Ned Doheny】
2023年11月10日(金)・11日(土)東京・ビルボードライブ東京 ※公演終了
2023年11月13日(月)大阪・ビルボードライブ大阪

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