[社説]政務三役辞任3人目 信任に足る政権なのか

 9月の第2次岸田再改造内閣の発足後、3人目となる政務三役の辞任である。内閣の布陣を「適材適所」と繰り返してきた岸田文雄首相の説明にもはや説得力はない。

 政府は13日、持ち回り閣議で神田憲次財務副大臣の辞任を決めた。2013~22年にかけて、自身が代表を務める会社の土地と建物が、固定資産税の滞納で4回、差し押さえられていた。

 週刊誌報道を受け、神田氏は国会で事実を認めて謝罪したが、辞任は否定。当初は官邸も「法律に抵触してはいない」などと擁護していた。

 臨時国会では、来週から岸田首相が打ち出す所得税減税の予算が審議される見通しだ。所管は財務省である。与野党から批判が高まる中での神田氏の辞任は、審議への影響を避けられなくなった岸田首相が判断を迫られた結果だ。事実上の更迭である。

 財務省は、国民に納税を求める官庁であり、副大臣は財務相に次ぐナンバー2のポストである。神田氏は税理士資格も持っている。税金の滞納を繰り返していたことを認めた時点で岸田首相は即座に更迭するべきだった。判断は遅きに失したと言わざるを得ない。

 政務三役を巡っては、文部科学省の政務官だった山田太郞氏が女性との不適切な関係を報じられて辞任。法務省副大臣だった柿沢未途氏も、公選法違反事件に関与したとして辞任したばかりだった。

 神田氏の更迭をためらったのは、相次ぐ辞任劇で政権への打撃を恐れた岸田首相の保身である。

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 岸田内閣の人事に当たっては、当選回数や派閥の均衡が重視され、自民党内からもしばしばその問題が指摘されてきた。

 女性の活躍を掲げ、9月の内閣改造では過去最多に並ぶ女性5人を閣僚に起用。一方で、副大臣や政務官54人に女性がゼロだったのは、派閥の要望を受け入れたためだ。

 来年秋の自民党総裁選での再選を見据え、党内の対立を生まないことに腐心しているからだが、あまりに内向きである。

 松野博一官房長官は会見で、スキャンダルを抱えていないかを確認する「身体検査」が不十分だったとの指摘に「結果として辞任が続いたことは遺憾であり、重く受け止めている」と語った。

 岸田内閣では昨年末までに閣僚4人も相次いで辞任している。自民党の危機管理能力には疑問符を付けざるを得ない。

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 神田氏の辞任を受けて、岸田首相は「任命責任を重く受け止めている。政府一丸となって、より一層緊張感を持って職責を果たしていく」と述べた。これまでも同様の発言を繰り返しており信用できない。

 共同通信の世論調査で内閣支持率は過去最低の28.3%まで落ち込んだ。所得税と住民税の減税を柱にした政府の経済対策は評価されず、政権は「危険水域」に入っていると言える。

 今後も辞任劇が続くようなら、国民の信用を取り戻すことはできない。

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