V長崎 2023年シーズン総括 後半失速、初の2年連続PO圏外・・・ カリーレ監督は続投に意欲

 サッカーJ2、V・ファーレン長崎の2023年シーズンは18勝11分け13敗(勝ち点65)の7位で幕を閉じた。3~6位が進めるJ1昇格プレーオフ(PO)争いを最後まで演じたが一歩及ばなかった。13年のJリーグ参入後、2年続けてのPO圏外(7位以下)は初めて。

 ◎上昇気流乗れず

 「高さ」と「若さ」をキーワードに補強を進めたカリーレ体制2シーズン目は、開幕から4戦未勝利と厳しいスタートとなった。その後は攻守がかみ合い、第5節のアウェー熊本戦の初白星から3連勝。第9節からは5連勝を飾り、一時はJ1自動昇格圏内の2位に浮上した。指揮官が掲げた前半戦の目標「32得点18失点」には届かなかったが、30得点21失点。4位で折り返し、自動昇格圏を視界に捉えていた。
 だが「魔境」とも表現されるJ2は甘くはなかった。他チームの足踏みもあって、最終盤までPO圏内で踏みとどまっていたが、第40節ホーム徳島戦で逆転負け。8位に転落し、自力でのPO進出がなくなった。わずかな望みを懸けた千葉との最終戦は3-1で快勝したが、PO進出を争っていた山形がロスタイム弾で勝って望みは絶たれた。後半戦は8勝6分け7敗。第21、22節以降、連勝は第41、42節の1回だけ。最後まで上昇気流に乗れなかった。

 ◎失点の多さ要因

 失速は失点の多さが大きな要因だ。前半戦は21失点だったのに対して後半戦は35失点。無失点試合は前半戦の8から3に減った。特に運動量が落ちる後半に22失点を喫している。選手交代のタイミングは適切だったのか。そもそも前線から相手にプレッシャーをかけず自陣で引いた守備は機能したのか。全試合フル出場したGK波多野豪は「毎試合20本以上のシュートを打たれている感覚」と振り返っている。
 最終的に昨季の54失点を上回る56失点。「高さ」を加えても、組織的な守備の構築ができたとは言い難い。指揮官は「自分の説明に工夫が足りなかった。15失点は減らせたはず」と反省する。
 一方で総得点は70とJリーグ参入後最多を更新した。J1自動昇格を決めた町田や磐田、3位清水に次ぐリーグ4位。アシストなどを含めた数字は軒並み上位に位置した。
 これはFWフアンマ・デルガドの活躍が大きかった。5年ぶりに復帰したスペイン人FWは26ゴールで得点王に輝いた。枠内シュート数はリーグトップ、決定率も25%以上と驚異的な数字を残した。クラブとしてJリーグで初の個人タイトルだった。

26ゴールを決め、攻撃をけん引したV長崎のフアンマ(中央)。J2得点王に輝いた=諫早市、トランスコスモススタジアム長崎

 ただ、2番手の得点はDF櫛引一紀の6点。夏に5年ぶりに復帰したMF中村慶太が4ゴール4アシストと奮闘したが、フアンマ頼りに陥っていた面は否めない。

 ◎補強ポイントは

 昨オフは指揮官の方針通り、若手7人がチームに加わったが、J1川崎からレンタル加入したFW宮城天(J2山形)、昨季まで主力だったDF加藤聖(J1横浜M)は出場機会が限られシーズン途中でチームを去った。MF五月田星矢(JFL滋賀)とDFカイケ(J2大宮)もレンタル移籍した。
 もちろん、台頭もあった。前半戦はMF安部大晴やMF笠柳翼が活躍し、後半戦はFWジョップ・セリンサリウ、MF松澤海斗、DF白井陽貴などが起用される試合も増えた。将来を見据えると若手の成長は不可欠。来季はDFモヨマルコム強志(法大4年)とV長崎U-18からFW七牟禮蒼杜とMF西村蓮音の加入が決まっている。
 来季の補強はどこにポイントを置くのか。カリーレ監督は「J1に昇格できるよう引き続き頑張りたい」と続投に意欲を示している。クラブは守備面に課題を感じており、守備的なポジションを重点的に補強していく方針だ。ただ、J1昇格を逃したことで、現有戦力が流出する可能性も少なからずある。仮に路線を継続して昇格を目指すのであれば、流出を最小限にとどめ、確実な上積みが必要だろう。
 来年10月には長崎市に新しいホームスタジアムが完成する。13日の開業1年前イベントで中村は「来年、このピッチでJ1昇格争いを繰り広げたい」と意気込んだ。J2降格以降、悔しい年が続いている。「あと一歩だった」「よく頑張った」-。プロの世界で、それはいつまでも通用しない。言い訳はもうできない。来季こそ、何が何でも昇格する。その覚悟が求められる。

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