処理水禁輸 ホタテ賠償交渉進まず 東電「前年との差額」 青森県内業者「高値の今年基準に」

工場で陸奥湾産ホタテを加工する従業員。県内の加工業者と東電との賠償交渉が進んでいない=9月、青森市

 東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を受けた中国の日本産水産物の禁輸措置を巡り、青森県のホタテガイ加工業者と東電との賠償交渉が進んでいない。業者側は、高値傾向だった今年のホタテ価格を基準とした賠償を求めているのに対し、東電は前年の売り上げとの差額分を支払うとしている。双方の折り合いがついておらず、交渉が長期化する可能性もある。

 県漁連によると8月以降、賠償に関する東電や経産省による加工業者向けの説明会は3度開かれた。その場で、放出前年の価格を基準として、価格の下落分や減収分を賠償する方針が示されたという。各業者は今後、県漁連を窓口として東電との交渉を加速させたい考え。

 ただ、今年の陸奥湾ホタテは稚貝不足による品薄のため高値が続き、業者によると、半成貝1キロ当たりの仕入れ価格が昨年より70円ほど上昇しているという。今年6月の入札の平均落札価格は235円だった。

 12日、青森市内で開かれた業者と自民党県連の意見交換会では、成邦商事(青森市)の笹原真社長が「去年の価格(が基準)では何にもならない。今年売れたであろう額、逸失利益分を補償してほしい」との考えを示した。

 東電の広報担当者は14日までの東奥日報の取材に対し、賠償額の算定について「至近の実績である放出前年を基本としている」とした上で「前年実績の採用が適さない事情がある場合は、その理由を聞き、適切に対応する」と説明した。

 県漁連のまとめによると、県内のホタテ加工約20社は現在、国内向けベビーホタテの在庫を計7千トン以上抱えており、その保管費用などが経営を圧迫している。業者は今後、北海道産ホタテが中国向けの輸出から国内流通に回るとみて、県産ホタテの価格下落を懸念する。ある業者は「早く賠償してもらわないと、ホタテの値崩れで資金繰りできなくなる」と危機感を示した。

 ホタテやナマコなどの漁業者に関する東電との賠償交渉は、各漁協が県漁連に窓口を一本化して行っている。

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