なまりって面白いんだ 津軽弁ユーチューバー・すんたろすさん(青森市出身)

青森県のポーズを取るすんたろすさん。「演じることが好きなので演劇関係の動画に出てみたい。オフラインのイベントもやってみたい」=東京・渋谷

 東北生まれのかの歌人はふるさと恋しさのあまり、方言のなまりを求めて駅の雑踏をさまよった。今は、そんなことをしなくたって配信動画でいつでもなまりを耳にすることができる。津軽弁ユーチューバーすんたろすさん(28)=青森市出身=の動画は、難解で、でも温かい津軽弁であふれている。

 「せばだばまんずきなの授業の復習がらするはんで(そうしたら手始めに昨日の授業の復習から)」

 「起ぎだっきゃあんべわりしてや(起きたら具合が悪くてねぇ)」

 コント動画に出てくるのは、津軽弁で授業するフランス語の先生、標準語を話しているつもりなのについなまってしまう若者、雪の日に迎えを頼まれた母親、とさまざま。どこかノスタルジックな雰囲気があるのは、実体験を基に「地元あるある」を盛り込んでいるから。「青森の面白い文化や方言を発信したい。県外に出た出身者からは『津軽弁を聞いてほっとした』というコメントも届きます」

 その素顔は外資系企業に勤める会社員。動画は主に帰宅後の数時間で制作し、多いときは週に3本をアップする。

 これまでに400本以上を配信したが、最も人気なのが「フランス語に聞こえる津軽弁会話」で、再生回数は160万回を超えた。

 青森市育ちのシティーボーイにしてはなまっていると思われるかもしれない。その秘密は幼少期の英才教育にある。「両親が共働きだったので、祖父母と過ごす時間が長く、方言を聞きながら育った。なまってるね、とよく言われましたが、なまりが珍しいものだとは思わなかった」

 そんなすんたろすさんが動画をつくり始めたのは、青森を出て感じた「違和感」がきっかけだった。

 今から10年前。仙台の大学に進学したすんたろす青年は、周りの人が誰もなまっていないことに絶望していた。友達に合わせて標準語を話す自分が「現実離れしているように感じられた」。もやもやを抱えていた大学2年のとき、カタカナ語を津軽なまりで発音するショート動画を配信。それが想定外にうけた。「知らない人には、なまりは面白いんだ」。青年は標準語を話すのを止め、動画をつくっては上げ続けた。

 小さいころから人前に出るのが好きだった。当初はユーチューブで「目立ちたい」との思いもあったという。ただ、今は考えが変わった。「祖父母の津軽弁を投稿したことがあって、普通のおじいちゃん、おばあちゃんの会話がずっと残るのが『いいな』と。津軽弁をデジタルの世界に置いておきたい」と語る。

 将来はいずれ青森に戻りたいと考えている。「青森で会社をつくり、若者たちが稼げる空間をつくりたい。青森に住みたい若者が増える、そんな地域になれば」。そのときは、外からではなく、地元から動画を発信するつもりだ。「体は東京、心は青森です」。取材中、一切なまりを崩さなかったすんたろすさんのモットーだ。

 ◇

 <すんたろす 1995年青森市生まれ。東京都在住。筒井中学校、青森高校、東北大学、同大大学院卒業。2020年、外資系企業に就職。大学時代に動画共有アプリ「Vine」でショート動画の配信を開始、その後ユーチューブに移る。チャンネル登録者は約5.9万人。すんたろすは名前の「しゅんたろう」に由来している>

© 株式会社東奥日報社