光熱費や医療資材高騰 青森県内病院、経営苦境 「診療報酬引き上げを」

水道光熱費の増加を説明する健生病院の泉谷事務局長。「このままでは病院運営が立ちゆかなくなる」=7日、弘前市

 光熱費や医療資材の高騰、人件費の増加によって、青森県内の病院経営が苦境に立たされている。年間で数億円の影響が出ている病院もある。患者への直接的な影響は出ていないが「このままでは資金が不足し、病院の存続も危うい。療養環境が悪化する恐れがある」との声もある。関係者は来年度改定される診療報酬の引き上げを求める。

 「経営が一気に悪化している。医療物資とエネルギー価格の高騰が痛い。2、3年続けば、病院の資金はショート(不足)してしまう」。弘前市の健生病院の泉谷雅人事務局長は険しい表情を見せる。

 新型コロナ禍前に比べ、水道光熱費で年間1億円以上、医療資材で1億円弱増加したという。

 同病院はコロナ対応病院として入院・外来患者に対応してきた。現在は、感染拡大の際に最大8床を専用病床に転換する態勢を取っているが、国の補助金が5月に半減となり、10月にさらに縮減され、ほとんどゼロになったことで経営難に拍車がかかった。

 病院全体の病床使用率が98%と高い水準で推移しているにも関わらず、赤字が発生する現状。「経営が厳しくなると人員や設備維持費を抑えざるを得なくなる。医療の提供そのものが難しくなってくる」と泉谷事務局長。来年度の診療報酬改定を見据え「物価水準に見合った診療報酬引き上げとコロナ補助金の維持が必要」と語った。

 県立中央病院(青森市)では今年4月から9月末までの半年間で、前年同期より水道光熱費が約7200万円(25%)増加。医療物資は全てが高騰による影響ではないが約3億3600万円(42%)増えており、経営を圧迫している。青森市の民間病院の事務担当者は「電気料が20%以上の値上がりで最も影響を受けている。医療資材は4月以降、平均12~15%、物によっては20%の値上がりがある。コロナの影響か分からないが患者が減っており、ダブルパンチで非常に厳しい」と悲鳴を上げる。

 弘前大学付属病院は、カテーテルなどの診療用消耗品などの高騰で本年度、年約1億円の影響を受ける見込みで、「今後の見通しも厳しい」(担当者)。

 八戸市立市民病院の今明秀病院事業管理者は「数千万円を超える高額医療機器の増加額は非常に大きく、今後は購入を先送りすることも検討しなければならない。高度医療化の減速が懸念される」と危機感をにじませた。

 青森県の病院も加入する日本病院会は10月、診療報酬改定に伴う入院基本料の大幅な引き上げに関する嘆願書を国に提出。「職員の確保・教育・処遇改善、施設設備機器の維持更新のための財源として入院基本料の引き上げが必須」などとしている。

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