“水面が黒い道路のように” 海中の車から父子5人の遺体発見 事故から1か月の現場は

三重県南伊勢町の漁港に車が転落し、車内から親子5人の遺体が見つかってから、15日で1か月です。事故が起きたとみられる早朝に現場を訪ねると、港の危険な一面が見えてきました。

日の出前、午前5時過ぎの南伊勢町道方の漁港。14日も男性が1人、釣りを楽しんでいました。静かな漁港で10月、こうした早朝の時間帯に「悲劇」が起きました。

(中道陸平記者)
「行方不明者届が出され、捜索にあたっていた警察官が海中で車を発見しました」

1か月前の10月15日、海の中に沈んでいる1台の乗用車が見つかりました。車の中には、伊勢市の自営業羽根正樹さん37歳と羽根さんの子どもで7歳から12歳までの小学生4人が乗っていましたが、いずれもその場で死亡が確認されました。

5人の死因は、溺死とみられています。

羽根さんは、これまでも子どもたちの登校前に釣りに連れていくことがあったといいます。

(地元住民)
「アジやイワシなど小魚を釣る場所、(釣りをしに)伊勢の方から来る人が多い」

幹線道路から離れた場所にあることから、穴場の釣りスポットとして町の外から釣り客も多く訪れるというこの場所。ここでよく釣りしている男性は「事故の危険がある」と指摘します。

(よく釣りをする人)
「夜に潮が上がっていると真っ暗で黒く見える。道だと思って(海に)入っていったのでは」

死亡した5人が釣りをしに訪れたとみられるのは、早朝。そこで日の出前に現場を訪ねました。

日の出前の現場は、水面が“黒い道路”のように

辺りに街灯などはなく、真っ暗なため、男性が指摘する通り、黒色の水面が“黒い道路”のようにもみえます。さらに約1時間半後の満潮時には、水位はほぼ岸壁の高さまであがり、海面と道路が一続きのようになりました。

事故で死亡した羽根さんは、運転操作を誤って海に転落したとみられ、漁港を管理する南伊勢町は事故後すぐに、車の立ち入りが危険だと呼び掛ける反射板付きの看板を設置しました。

以前は、早朝には真っ暗だった場所もライトを付ければ、看板の存在が分かるようになりました。ただ、転落防止のために柵などを設置することは難しいと言います。

(南伊勢町・水産農林課城勝司課長)
「漁業者の水揚げとかで柵があるとどうしても邪魔になるということで柵の設置はないです」

町は今後、岸壁と道路の境に発光塗料で線を引くなどさらなる転落防止の対策を検討しています。

しかし、事故が起きた漁港だけでなく釣り客など一般の利用者を想定していない港は車止めがない場所も多く、立ち入る際には注意が必要です。

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