社説:八幡市長選 問われる公約の実行力

 12日に投開票が行われた八幡市長選で、無所属新人の川田翔子氏が初当選を果たした。33歳2カ月は女性市長として全国で史上最年少だ。

 前市長の後継として自民、立憲民主、公明の3党の推薦を受けた川田氏が、日本維新の会公認の新人と、共産党推薦の無所属新人に競り勝ったことは、有権者が安定した市政の継続を選択した結果といえよう。投票率は約43%で、前回選から15ポイント近く上がった。

 京都市職員などを経験した川田氏は、京都府や国との連携強化を前面に打ち出し、18歳までの医療費や小中学校給食費の無償化、企業誘致の促進、公共交通の充実などに取り組むと訴えた。選挙中に強調した「若さ」を生かしつつ、公約を着実に現実化する「実行力」が問われる。

 八幡市の人口は1970年代の男山団地開発などで急増し、93年には約7万6千人に達した。その後は減少傾向が続き、今年9月末には約6万9千人まで減った。65歳以上の割合を示す高齢化率は2020年時点で31.5%と、過去10年で10ポイントも上昇している。

 今後も人口減少と高齢化が急速に進み、歳入減と歳出増が見込まれる上に、予定する旧市庁舎の活用整備や公共施設の老朽化対策に多額の費用が必要となる。借金にあたる市債残高が286億円まで積み上がった厳しい財政の中で、事業を取捨選択して優先順位を明らかにすることが求められる。

 市の「玄関口」である京阪石清水八幡宮駅前は、スーパーの閉店などで人通りが減り、衰退ぶりが著しい。国内外からの観光客ら「交流人口」を伸ばすには、駅前のにぎわい再生とともに、石清水八幡宮や周辺の社寺、背割堤、流れ橋(上津屋橋)といった観光スポットを巡る人の流れを生み出す具体策が欠かせない。

 市内を通る新名神高速道路は27年度に全線開通の予定で、名古屋市と神戸市を東西に結ぶ。南北の第二京阪道路との結節点として、交通の利便性が一層高まる。

 しかし、市内の4工業団地は全ての区画が埋まり、企業が進出する用地の不足が課題となっている。市は農地を転用する産業振興ゾーンの設定を行っているが、計画は思うように進んでいない。

 新名神の開通を機に、地域再生や企業誘致をどう進め、雇用の創出や税収確保につなげていくのか。川田氏には、市民や議会と丁寧な対話を重ね、まちの将来像を明確に示してほしい。

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