「きょう僕は少しは変われたかなと思います」香取慎吾さん 初めて訪れた平和公園で感じた“広島” 目を閉じて浮かんだのは“ステージで歌いながら感じた悔しさ”

香取慎吾さんが15日、初めて平和公園(広島市中区)を訪れました。原爆慰霊碑に花を手向け、ゆっくりと平和公園を歩いて回り、78年前に起きたこと、争いが絶えない現在、そして未来のことに思いをはせました。

「凄い観光バスの量ですね」。平和公園に到着した香取さんは、公園内に並ぶ観光バスの数に驚かされました。「1、2、3…ざっと数えても数十台はありますよ」と目を丸くします。

コロナ禍が明け、減っていた修学旅行も回復。香取さんが訪れたときも、全国各地から高校生や中学生が訪れてきました。

香取慎吾さん 「こんなにバスが、いろんな地域から来ていますけど、あんまり見たことがない」

コンサートなど広島には何度も訪れたことはありますが、平和公園を訪問をするのは初めてだといいます。今回、12月に広島市で個展を開催することもあり、「一度訪れてみたい」と、仕事の合間を縫って足を運びました。

原爆資料館から原爆慰霊碑に伸びる参道に入ると、足が止まりました。平和公園は、原爆資料館本館、原爆慰霊碑、そして原爆ドームが直線上に並ぶように設計してあります。視界には原爆から復興を遂げた広島の町並みも入ります。

香取慎吾さん 「ここから過去のことも、いまの空を見ながら、未来も思える」

参道をゆっくり進み、すれ違う修学旅行生や観光客に「こんにちは」と声をかけながら、原爆慰霊碑へ向かいます。そして、慰霊碑に花を手向け、静かに目を閉じました。

香取慎吾さん 「涙がこみ上げますよね。『あやまちは繰り返さないように』と、どんな人もきっと思っていると思うんですよ。この国の人間だけじゃなく、世界中の人たちがそう思っているはずなのに、今でも戦争が起きていて…」

慰霊碑に黙祷を捧げていたとき、あることを思い出していました。

香取慎吾さん 「自分でもステージで歌って、本当にみんなの笑顔を願ったり、未来を思ったりする。歌をみんなが口ずさんでいるときに、『こんなにもみんなの思いが一つになっても、戦争のない世界ってすぐには手に入らないものなんだなって。ステージで歌いながらも、悔しい思いをしたことを凄く思い出したりしました」 「でもこうやって…なんていうのか、心が痛い。僕は普段の生活で、このいま感じている痛み、感覚になる時間はほとんどないです。ニュースで戦争の映像を見ていて、見るのもつらくて、目を背けてしまいそうな映像ばかりだと思っていても、いまのこの気持ちには至っていないかもしれない」

次に向かったのは、「原爆の子の像」でした。2歳で被爆し、被爆から10年後に白血病で亡くなった佐々木貞子さんの同級生たちが中心となって、原爆で犠牲になった全ての子どもの霊を慰めるために建立されました。

修学旅行で訪れる多くの学校は、この像の前に集まり、千羽鶴を奉納するなどの平和集会を開きます。香取さんが訪れたこの日も、修学旅行生が「原爆の子の像」の前に集まり、平和を願って合唱をしていました。

香取慎吾さん 「戦争がすごく近くに、映像を毎日ニュースで見ている中、ここに来た子どもたちは何を思うのかなって」

子どもたちの歌声に耳を傾ける香取さん。心には「悔しい」という思いがこみ上げてきたといいます。

香取慎吾さん 「なんですかね、この悔しさですね。これだけ平和を思う人がいるのに、それ以上に争いを求める人がいるということなのか…。そういう訳でもないだろうに、それでも終わらない。止まらない。いつまでたっても続いてしまう。みんなでこんなに心を込めて、思いを歌にも乗せているのに」

原爆ドームの近く、原爆の投下目標となった相生橋にさしかかると、建設が進む新たなサッカースタジアムが目に留まりました。

香取慎吾さん 「スタジアムはほんとに、まさに今を表している。もう今ですよね。2023年、今がここにある。そして原爆ドーム。もちろん辛い感情が湧き上がる場所でもありますけど、とても綺麗で気持ちのいい場所でもありますね」

最後に足を運んだのは原爆ドームでした。被爆前、広島県産業奨励館と呼ばれたこの建物は、木造の建物が並ぶ当時、レンガ造りの建物は広島のシンボルの一つとなっていました。しかし、原爆により半壊状態に。鉄骨もむき出しとなり、頂上の円盤の形から、いつしか市民から「原爆ドーム」と呼ばれるようになりました。

香取さんは、原爆ドームの説明文に目を落とします。「1個の爆弾によって20万人を超える生命が失われ、市街地が廃墟と化した。この悲痛な事実を後世に伝え、人類の戒めにするため、永久に保存する」。読み終えた香取さんは…。

香取慎吾さん 「『この悲痛な事実を』って、事実っていう前につく言葉にしては、おさまりきらない。この悲痛っていう…」 「知れば知るほど、なんか進まなきゃいけないはずなのに、もっと未来に向けて、平和に向けてって思いはもちろんなはずなのに。いざ来てみて重さを感じると、ちょっと悔しいですけど、『その一歩、そんなに軽くないですよ』って言われているような気もしてしまう」

78年前に起こったこと、現在、そして未来。さまざまなことに思いを巡らせ平和公園を歩いた香取さん。「ここに来なければ分からなかった」と話します。

香取慎吾さん 「ニュースだったり、映像でずっと広島、この原爆ドームも見てきましたけど、実際に来てみて感じるものは、全く違うものですね。映像とかが伝えようとしてくれるものが、自分には伝わっていると思っていたけど、全然遠いものだった。やっぱり、実際に足を運んでみて、感じる思いっていうのは、ここに来ないと分からないんだって、とても感じました。知っていたはずなのに、知らなかった。本当に改めて平和を願う自分の思いを、より強く願えるように、きょう僕は少しは変われたかなと思います」

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