しばらくリーガは考えなくていい…/原ゆみこのマドリッド

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「何かまた知らない顔が増えたみたい」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設でスペイン男子代表の公開練習を見ていた時のことでした。いやあ、元々、昨年のW杯の後、ルイス・エンリケ監督(現PSG)から、デ・ラ・フエンテ監督になった途端、15人もメンバーが変わった上、9月の代表戦で負傷したアセンシオ(PSG)やダニ・オルモ(ライプツィヒ)もまだ復帰せず。一番多いのがレアル・ソシエダ勢の5人で、もちろん、アトレティコ戦の後、メトロポリターノでよくインタビューを受けている姿を見かけるオジャルサバルと、スペイン国籍を取ったフランス人CB、ル・ノルマンぐらいはわかるものの、ミケル・メリーノ、スビメンディ辺りになると怪しくなり、更にケパ(レアル・マドリー)の負傷により、呼ばれたレミロも練習着がGK用だからこそ、わかるぐらいですからね。

それ以外も今回の初招集組では、アトレティコのリケルメは大丈夫なんですが、土曜にエスタディオ・バジェカスでプレーは見たものの、顔までは見られなかったアレックス・ガルシア(ジローナ)、シャビ・アロンソ監督の下でプレーするグリマルド(レバークーゼン)までくると、もう完全にお手げ。スタンドに詰め掛けたファンたちが、30分弱で終わった練習後、ファンサービスに近寄ってくる選手たちの名前を的確に叫んでいるのを聞くと、皆、よく知っているなと感心してしまうんですが、はあ。ええ、今回も私の応援したいマドリッドのチームの選手はカルバハル、ホセル、モラタ、リケルメとマドリー、アトレティコ共に2人ずつしかおらず。

あの一世を風靡した、国際メジャー大会3連覇のスペイン黄金時代のスタメンがほぼ、マドリーとバルサで占められていたことを考えると、ええ、今やバルサからでさえ、ガビ、フェラン・トーレス、ジャマル、イニゴ・マルティネスの4人しか来ていませんからね。ユーロ2024予選最後となる今週木曜午後6時(日本時間2時)のキプロス戦、日曜午後9時(同5時)のジョージア戦を見る際にはもっと、選手の顔を覚えられるといいのですが、さて。

ちなみに10月のスコットランド戦、ノルウェー戦で連勝したスペインはすでに本大会進出を確定。2位のスコットランドと勝ち点が同じなため、彼らと同じ結果を出せば、1位突破のシード権をもらえることになりますが、チームは火曜午後にはもうリマソルに移動しています。試合後もマドリッドには戻らず、2試合目の開催地、バジャドリッドに直接行ってしまうため、来年3月までもう、代表選手を間近で見られる機会がないのはちょっと、淋しいかと。

まあ、そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢のリーガ戦がどうだったか、お伝えしていくことにすると、金曜には2部の弟分、レガネスがブタルケでレバンテに2-1と勝利し、この15節では2位スポルティング・ヒホンとの勝ち点差が6に拡大。4年ぶりの昇格に向けて、首位をガッチリ固めた後、1部勢は3チームが土曜に集中したんですが、先陣を切ったのは午後2時の日差しが嬉しいエスタディオ・バジェカス。驚異の単独首位、ジローナをラージョが迎えたんですが、そもそも前節、フランシスコ監督のチームがサンティアゴ・ベルナベウでスコアレスドローを勝ち取ったため、兄貴分のマドリーが勝ち点差2をつけられて、2位に後退してしまったんですよね。

その償いをすべきと思ったか、立ち上がりからラージョは猛攻を開始。早くも4分にはイシがエリア内に入れたボールをアルバロ・ガルシアが決めて、先制点をゲットすることに。まだバジェカスのファンの歓迎ぶりに感動して、ぼおっとしていたかもしれないラージョのレジェンド、カンテラ(下部組織)出身で、現役生活トータル12年間、指揮官としても3シーズン務め、1部再昇格の功績を残しているミチェル監督を驚かせたんですが、やはり12試合も消化して、首位にいるというのはダテではなかったよう。ええ、徐々にラージョのエリア近くに現れるようになったジローナは、22分にはドブビクのシュートをルジューヌが奇跡的にゴールライン上でクリアしたりと、いつ得点してもおかしくない感じになっていたんですが、41分、とうとうウクライナ代表仲間のツィハンコフのラストパスから、ドブビクが同点ゴールをゲットしているんですから、侮れない。

後半になると、カメージョやトレホの一撃がゴール枠を叩く惜しいチャンスもあったラージョでしたが、19分には再び、ドブビクにエリア内シュートを許し、いえ、こちらはGKディミトリエフスキがpardon(パラドン/スーパーセーブ)で弾いたんですけどね。こぼれたボールをサビーニョに勝ち越しゴールに変えられてしまうんですから、たまったもんじゃありません。マドリッドの弟分チームもエヌテカ、ファルカオ、キケ・ペレス、ベベ、デ・フルートスとアタッカーをつぎ込んで、最後まで同点を目指したものの、バジェカスのファンが再びゴール祝いに湧くことはなく、そのまま1-2で負けてしまいましたっけ。

いやあ、これにはミチェル監督が引き継ぐ前、ジローナを率い、1部昇格プレーオフ決勝で爆沈していたフランシスコ監督も「Ha sido uno de los mejores rivales a los que me he enfrentado en los últimos años/ア・シードー・ウノ・デ・ロス・メホーレス・リバレス・ア・ロス・ケ・メ・エ・エンフレンタードー・エン・ロス・ウルティモス・アーニョス(ここ数年、私が対戦した中で一番いいチームの1つだった)」と、相手を絶賛していたんですけどね。そのジローナがすでに勝ち点34を溜め、当初の目標である1部残留確定も近々、達成可能となったため、「Tenemos que buscar objetivos más ambiciosos/テネモス・ケ・ブスカル・オブヘティーボス・マス・アンビシオーソス(ウチはもっと野心的な目標を探さないといけない)」という、ミチェル監督の優勝はともかく、CL、EL出場権を争う姿勢が明確になったのはいいんですが、ラージョの方はまだ勝ち点18と道半ば。

順位は10位ですから、特に心配することはないんですが、何せ各国代表戦明けのリーガではバルサがやって来ますからね。もちろん2年前など、バジェカスで勝って、クーマン監督解任を誘発したなんてこともあるものの、痛いのはこのジローナ戦で5枚目のイエローカードをもらったアルバロ・ガルシアが累積警告で出場停止となること。何せ、土曜はプレーしなかったRdT(ラウール・デ・トマス)を始め、カメージョ、エヌテカら、FW陣が今季まだ、全然当たっていない彼らですからね。ここ4試合、チームの勝利を祝う、「Vida de prata/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を歌っていないファンを満足させることができるかは微妙ですが、今はこの2週間のparon(パロン/リーガの停止期間)で風向きが変わってくれることを祈るばかりでしょうか。

そして土曜の夜にはサンティアゴ・ベルナベウに向かった私だったんですが、丁度、その間にはもう1つの弟分、ヘタフェがロス・カルメネスでのグラナダ戦を終えていて、いやあ、これも開始2分、グリーンウッドの折り返しから、マジョラルが先制点を挙げ、いいスタートを切ったんですけどね。42分には、2022年の1月にマジョラルと共にローマからレンタル移籍。片や、ヘタフェに居つくことになったのと対照的に、翌シーズンも冬にレンタルで来て半年間在籍しながら、今季からグラナダの選手になっていたゴンサロ・ビジャルが古巣恩返し弾で同点に。そのまま1-1で終わり、今季7つめのドローとなった彼らはリーガ1部の引分けの帝王の座を確固たるものに。

こういうのって、ちょっとじれったくもありますが、ここまで7得点と定期的にゴールを挙げてくれるのはマジョラルしかいないボルダラス監督のチームですからね。とりあえず、代表戦明けは最下位アルメリアのパワーホース・スタジアムを訪れることになりますし、5月末にヒザの靭帯断裂をしたエネス・ウナルも復帰にはまだ時間が必要なため、今は降格圏と勝ち点差9ある11位の座にいられることに感謝するしかない?

一方、先週はラージョとのゴールなし試合の鬱憤をCLスポルティング・ブラガ戦で3-0と快勝して晴らし、グループ突破を確定。年内はリーガに専念できることになったマドリーはバレンシアとの対戦だったんですが、当日には兄弟分ダービーで肩を脱臼し、この試合で戻る予定だったベリンガムが大事を取って、ベンチ入りしないことが判明。それでもマドリッド勢の早起き傾向は続き、ええ、こちらも開始3分のことでした。「Tengo más libertad para llegar arriba con el 4-4-2/テンゴ・マス・リベルタッド・パラ・ジェガール・アリバ・コン・エル・クアトロ・クアトロ・ドス(4-4-2のシステムではより前線に上がる自由がある)」というカルバハルがエリア前からシュートを決め、あっという間にリードしているんですから、ビックリしたの何のって。

ただその後はバレンシアも我を取り戻し、ええ、実際、ウーゴ・ドゥーロの2度のシュートなど、GKルニンがしっかりセーブしてくれたから、同点にされずに済んだようなものでしたからね。スタンドのファンも42分にロドリゴのラストパスをビニシウスがゴール前から胸で押し込み、追加点を挙げてくれるまで、結構ドキドキしていたんじゃないかと思いますが、それがまさか2-0で後半が始まった途端、相手が自爆してくれるとは!

だってえ、後でバラハ監督も「ウチはマドリーを有利にするため、できること全てをした」と嘆いていたんですが、またしても4分という早い時間、パウリスタのロストしたボールを奪ったビニシウスがエリア前からシュート。3点目を決めたかと思えば、その1分後にはGKママルダシビリがゴールキックをロドリゴに出してしまい、当人がそのボールをしっかりネットに沈めて、4点目をゲットしているんですよ。おかげで前半中にヒザを打撲しながら、チームのためにムリして後半のピッチに出て来たバレンシアのキャプテン、ガヤも、ええ、月曜にはスペイン代表の合宿も始まりますからね。早々にカンテラーノのヤレクに代わってしまいましたが、15分過ぎからはアンチェロッティ監督も粛々と人事ローテーションを実施。

バルベルデ、メンディ、ここ2試合、ベリンガムの代理を務めたブライム、カルバハル、ビニシウスと順にお休みをもらったんですが、このgolaeda(ゴレアダ/ゴールラッシュ)の仕上げをしたのは、終わりの近づいた39分、ピッチに残っていたロドリゴでした。フラン・ガルシアからパスをもらってエリア内に入ると、敵DFを切り返し、manita(マニータ/5得点のこと)を達成しているんですから、ブラガ戦でようやくゴールづいたばかりの身でありながら、貪欲なことといったらもう。これにはアンチェロッティ監督も「Vinicius y Rodrygo han vuelto a su mejor nivel/ビニシウス・イ・ロドリゴ・アン・ブエルトー・ア・ス・メホール・ニベル(ビニシウスとロドリゴは彼らのより良いレベルに戻った)」とホクホク顔でしたが、残念。43分にはとうとう、ドゥーロが名誉のゴールを挙げたため、ルニンの2試合連続クリーンシートは叶いませんでしたっけ(最終結果5-1)。

これでジローナとの差を勝ち点2に戻したマドリーは火曜には一旦、イングランド代表に合流して、肩の診察を受けていたベリンガムもお許しをもらい、マドリッドに帰還。バルデベバス(バラハス空港の近く)でリハビリを続けることとなり、その他、9人の各国代表選手以外はこの2週間、カディス戦に備え、ゆったり練習に励むことになるんですが、その一方で、日曜の夜に13節最後のカードに挑んだお隣さんはというと。いやあ、メトロポリターノではCLセルティク戦6-0のゴール祭りを見た後だったからか、折りしも相手のビジャレアルが木曜のELマッカビ・ハイファ戦に勝った後、パチェタ監督を解任。マルセリーノ監督招聘を視野に、この試合はスポーツディレクターのテナ氏が監督を務めることになっていたせいですかね。

何となく、試合前から楽勝ムードを感じて、私も気が抜けていたところがあるんですが、序盤から敵陣に入り浸っていたアトレティコだったにも関わらず、前半20分、セルロートのシュートはGKオブラクが弾いてくれたものの、その跳ね返りをジェラール・モレノに撃たれ、先制点を奪われてしまったから、さあ大変!おまけにこの日に限って、モラタの頭の精度が悪く、ヘッドを外しまくっていたため、さすがに30分を越える頃には心配になってきたんですけどね。人の不幸を喜んではいけないものの、36分、ヒメネスと競争してボールを負ったセルロートが脚を痛め、MFのテラッツと交代してくれたのが転機となったんですよ!

そう、相手の得点力が半減したのをいいことに更に前掛かりになったアトレティコは前半ロスタイム、エリア内左奥に入ったグリーズマンがゴールと平行にパスを出したところ、ニアサイドのモラタこそ、触れられませんでしたが、ファーサイドにいたビッツェルがvolea(ボレア/ボレーシュート)で押し込み、同点で折り返すことに。サウールからマルコス・ジョレンテに代わり、右サイドのスピードアップを図った後半、とうとう35分には勝ち越し点もゲットします。ええ、コケの入れたクロスをジョレンテがワンタッチで送り、グリーズマンがクラブ歴代最多得点2位タイとなるゴールを決めてくれたんですが、ホント、この日は交代運がありましたね。

というのも40分にも途中出場したバリオスがセンターからドリブルを始め、エリア前まで行って、こちらもリケルメと代わっていたサムエル・リノがフィニッシュ。3-1ともなれば、ファンも心ゆくまでホーム17連勝目を味わえたんじゃないかと思いますが、え?だから私がアトレティコの試合を見て怒っているのは、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でアウェイゲームをTV観戦した時ばかりなのかって?実際、その通りで、この白星街道が始まったのは昨季の2月、弟分のヘタフェと引分けて以来ですからね。先日のラス・パルマス戦やセルティックパークでの試合でのようなポカをしなければ、今頃、リーガ首位と勝ち点差6の4位だったりせず、CLグループリーグ突破だって、決まっているはずですが、こればっかりはねえ。

とりあえず、こちらもスペインU21に招集されたバリオスを含め、計9人が出向するこの代表戦週間では、延期されていたコソボとイスラエルのユーロ予選がこの日曜に開催。エースのムリキがいないからと、13節のカディス戦を11月最後のミッドウィークにしてもらったマジョルカを迎え撃つ準備をしっかりしてもらいたいところですが、実はこの試合もメトロポリターノ開催なんですよ。となると、連勝が18まで延びる可能性もかなり高い気がしますが…全ては選手たちが代表からケガをせずに帰ってきてくれるかどうかに懸かっているんじゃないでしょうか。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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