[社説]前那覇議長逮捕 賄賂で質問 全容解明を

 那覇市議会の久高友弘前議長が県警に逮捕された。

 民間人女性が所有権を主張している那覇市有地を巡り、土地の購入を希望する不動産会社代表らから現金計5千万円の賄賂を受け取り、議長の立場を利用して市を追及した疑いがもたれている。

 共謀したとして民間人女性の後見人や、賄賂を贈った疑いで鹿児島県の元総会屋と東京都の会社役員も逮捕された。不動産会社代表は闘病中のため在宅で調べを受けている。

 今年3月に本紙が報じた議長の現金授受疑惑は、関わった4人が逮捕される汚職事件となった。

 久高容疑者は市議会議長室で現金の受け渡し行為や領収書に署名したことを認めたものの、当初「同席した民間人女性の親族が全額持ち帰った」と実質的な受領を否定していた。

 その後、一身上の都合で議長を辞任。体調不良を理由にしばらく議会を欠席したが、7月には市内で会見を開き改めて金銭の授受を否定した。議会活動を再開し、9月議会では一般質問にも立っていた。

 金を受け取り便宜を図っていたとすれば、疑惑発覚後も再三にわたり市民を欺いていたことになる。公職にあるまじき行為だ。

 捜査では元総会屋との関わりも浮上するなど、手口は悪質にみえる。

 県警は議会質問を利用した贈収賄事件の全容解明に努めてほしい。

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 久高容疑者は当選回数10回のベテラン議員だった。今年5月まで自民党県第1選挙区支部の支部長も務めていた。

 こうした議員としての信用を利用して、民間人女性の後見人は、所有権移転後に数百億円の利益が出るとされた土地売買のとりまとめも一任したという。

 一方、疑惑に対し、市議会の対応は後手に回った。

 報道を受け説明を求めたが、言い訳に終始する久高容疑者を追及できず終了。約半年後の家宅捜索を受けて再び説明を求めたものの、本人が応じることはなかった。

 ただ、一向に所有権が移転されないことから事件を公にした不動産会社社長ら関係者から事情を聞くなどの対応はできたのではないか。

 議長の現職時代の収賄容疑は議会のこけんにも関わる。

 久高容疑者は、ほかの市議に報酬を渡して質問してもらったとも証言している。対応に問題はなかったのか、市議会での徹底した検証が求められる。

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 賄賂を受け取ったとされる後、昨年の議会常任委員会では議長だった容疑者が市執行部を脅す場面もあった。

 厳しい追及と賄賂に関係性があれば議会の権限を失墜させる事態だ。市民の政治不信にもつながりかねない。

 久高容疑者は市議会政務活動費を不正に受給した詐欺の疑いでも家宅捜索を受けている。万が一にも賄賂で行政がゆがめられることがあってはならない。市議会は足元の不正を重く受け止め、市民が納得できる説明をつくすべきだ。

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