衝撃「美女爆弾」集団と不死身のリベンジ旅!まるでラノベみたいなアクションホラー『スキンフォード/処刑宣告』の楽しみ方を徹底解説

『スキンフォード:処刑宣告』

なんだこのラノベみたいな設定の映画は!?

「地面を掘っていたら下着姿の綺麗な女性が出てきました! しかも、その女性と一緒にいると絶対に死なない体になるので、せっかくだから悪者を倒す冒険に出ます!」

――そんなラノベみたいな映画があったら観ますか?『スキンフォード/処刑宣告』は、そういう映画です! しかも下着姿の女性は一人ではありません、たくさん出てきます。その中には元カノもいて、ちょっといがみ合ったりするけれど、なんだかんだとみんな一緒に行動することになるのです! 何ですかこれは! ひと昔前のハーレム系ギャルゲーですか? それともエロゲーですか? いえいえ、アクションホラー映画です!

ここまで煽っておいて何故そんなことを言うのかって? だって一人を除いて全員、血飛沫を上げながら爆発するからですっ‼

ドカンドカンと爆発し血の華を咲かせる美女たち

『スキンフォード/処刑宣告』は奇妙な映画だ。病気の父親の治療費を稼ぐため、悪事に手を染める主人公ジミー・スキンフォードことスキニーと、不死の呪いをかけられた女性ゾフィア、2人の因果な物語。設定は興味をそそるものの、妙な違和感があるのだ。

だってタグライン(※対外スローガン的な短文)が「真夜中の連続美女爆破!」ですよ? しかも、爆発する理由が“狂った医者に人間爆弾にされたから”だ。なんか、もうちょっとちゃんとした理由がなかったのかと。

“人間爆弾”というと、70年代に放送されたサンライズのアニメ、『無敵超人ザンボット3』を思い出す。しかし、テロ目的だった『ザンボット3』に比べ、こちらは非常に短絡的だ。マッドサイエンティストが女体をこねくり回すのが好きだった、そして、それは赤色が好きな狂った子供が頼んだから。それだけの理由である。

タグラインのとおり、美女がドカンドカンと爆発し血の華を咲かせる。でも、それは映画が始まって中盤に差し掛かった時だ。女性たちが盛大に爆死した後は、不死の女性ゾフィアと主人公ジミー・スキンフォードのイチャコラとド変態サイエンティストが拷問する様、頭のイッちゃったお子様の芝居を見せられることになる。

「じゃあ、見どころはどこなの? もしかして、また叶井俊太郎率いる配給会社エクストリームに騙されちゃった?」

いえいえ、見どころ、あります。みんなね、勘違いしているんですよ。エクストリームの映画は変な作品が多いけれど、ちゃんとスクリーン映えする作品を持ってくるんです。

『スキンフォード』の“ド変態かつ美しい”見どころを解説

例えば、ド変態サイエンティスト一人を取っても濃い。その愚直なまでの変態っぷりには、ほとほと参ってしまう。

女性の顔面に真っ赤な蝋で模様をつけ、

「私の可愛い小鳥に蜜ろうを塗ってやろう」

そして腹に爆弾を埋め込み、グッチョグッチョといじくり回しながら

「私は見たくてしかたないんだ、彼女たちの表情を」

である。さらに、彼はゾフィアに首を掻き切られるが、自分で「アフアフ」と言いながら縫って治療する。お前は『Dr.ギグルス』(1993年)かと。

加えて、“画”づくりも悪くない。冒頭の燃える車を眺める全裸のゾフィアとスキンフォード、連続爆破の順番、銃の一斉掃射を浴びても弾丸を跳ね返しまくるスキンフォードとゾフィア……中でも水責めにあっているスキンフォードを助けるゾフィアの場面は「美しい」の一言に尽きる。

では、先に述べた“違和感”とはなんなのか? それは、すべての場面の“つながり”が希薄なところだ。ゾフィアが不死となった理由、素性が分からないスキンフォードの出生、キ印の子供やマッドサイエンティストはどこから来たのか? 詳細が全部ブン投げたままになっている。つまり「こういう映画が撮りたい!」という気持ちを優先しているのだ。

実は2017年の作品!? 気になる続編も次々製作・公開

監督のニク・カチェフスキーは、本作が長編デビュー作。そう考えると致し方ないかもしれない。さらにこのチグハグ感には理由があって、実は本作、2017年の製作。すでに続編の『Skinford: Chapter 2』(2018年)も作られ、本国オーストラリアでは公開済みなのだ。つまり世界公開にあたってバイヤーが“2022年制作”としていたのである。これは日本はもちろん、米国でも同じ。過去の映画がようやく世界公開に漕ぎつけたものの、新作扱いされているのである。

ニク・カチェフスキーにしてみれば、この状況は得しているのか損しているのか、よくわからない状態になってしまっているが、彼のビジュアルセンスが素晴らしいことに違いはない。2021年に制作した短編『Soulmate』は、人口増加対策のため2人以上の子供は間引かなければならないディストピアを舞台にした近未来SF。秘密裏に2人の姉弟を育ててしまった夫婦。母は弟、父は姉を優先し、子供たちをお互いに殺し合わせる物語。雪景色をバックに返り血を浴びながらブン殴り合う姉弟、そこに至るまでの緊張感のある演出は「スゲェ」の一言だ。これはYouTubeの短編チャンネル<DUST>にて無料鑑賞可能なので、ぜひ観てほしい。

さて、すでに製作済みの続編『Skinford: Chapter 2』が気になるところだが、こちらはスキンフォードもゾフィアも続投し、1作目でブン投げっぱなしだった彼らの出生の秘密が明かされる上、楽しいアクションシーンもある傑作になっている。1作目が売れれば2作目もちゃんと公開されるんじゃないかな?そして 現在、ニク・カチェフスキーは、『スキンフォード』の“正統な続編”である『Skinford 2: The Curse』を制作中だ。

文:氏家譲寿(ナマニク)

『スキンフォード/処刑宣告』は2023年11月17日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿シネマカリテほか全国ロードショー

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