クスノキに外来害虫寄生 被害深刻な木も 長崎西高生ら対策を訴え

緊急調査速報をまとめた(前列左から)峯さん、山田真里奈さん、山田実咲さん、(後列左から)安永さん、長嶋教諭=長崎市、長崎西高

 長崎市などで常緑樹のクスノキに外来害虫「クスベニヒラタカスミカメ」が寄生し、落葉などの被害が広がっていることが県立長崎西高の2年生と教諭ら5人の調査研究で分かった。山王神社の「被爆クスノキ」や、大徳寺の「大クス」など天然記念物に指定された木でも見つかっている。被害が深刻化する恐れがあることから、生徒らは15日に調査結果をインターネットで公開し、防除対策の必要性を訴えている。
 クスベニヒラタカスミカメは中国原産のカメムシ目カスミカメムシ科の昆虫。5~11月が活動期で、クスノキの葉の汁を吸う。被害部位は褐色斑を生じて落葉。光合成ができなくなるため樹勢が衰えるという。
 国内では2015年に関西で生息が確認され、中部地方や関東、九州でも生息域を広げていたが、県内では確認されていなかった。
 先月20日、同校特別非常勤講師を務めるカメムシ専門家の安永智秀さん(60)が、校内のクスノキに体長6、7ミリほどのこの虫が多数いるのを発見。スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)科学探究講座の2年生と校内を調べたところ、市指定被爆樹3本を含むクスノキ36本全てに寄生しているのを見つけた。被害が深刻な木は半分以上の葉が落ちていた。
 10月下旬から11月上旬の2週間、市内と西彼時津、長与両町の50地点のクスノキ約250本を調査。爆心地公園、県庁跡地周辺、時津ウォーターフロント公園、吉無田公園など約9割に寄生しているのを確認した。被害度をランク分けし、最もひどいA(過半数が落葉)は長崎市科学館など5カ所あった。緊急調査速報として15日、同校などのオンライン学術誌「若者たちの科学雑誌」に掲載した。
 調査に当たった山田実咲さん(16)は「服や車にくっつき“ヒッチハイク”で生息域が広がったのでは。稲佐山や離島まで調査を広げたい」と分析。山田真里奈さん(17)は「平和のシンボルの被爆クスなど守らなければならない」、峯結菜さん(16)は「研究してきた忌避剤の防虫効果を試したい」と話す。
 安永さんは「県内には昨年侵入したのではないか。外来種なので天敵がいない。来年の発生期に爆発的に増える恐れがある。公的な対策が必要」と指摘。生物担当の長嶋哲也教諭(64)は「剪定(せんてい)後の新しい葉に寄生するとダメージが大きく、最悪、樹木が枯れる可能性もある」と注意を促している。

クスノキの葉を吸汁するクスベニヒラタカスミカメ。食害部位に褐色斑が生じている(安永さん提供)

© 株式会社長崎新聞社