旅行5社、コロナ患者移送で談合か 青森市発注の指名競争入札 公取委が立ち入り検査

立ち入り検査を終え、日本旅行青森支店を後にする公正取引委員会の職員=15日午後5時10分、青森市
東武トップツアーズ青森支店のあるビルから出る、立ち入り検査後の公正取引委員会職員と思われる一団=15日午後6時3分、青森市古川2丁目

 青森市が発注した新型コロナウイルス感染症患者の移送業務の指名競争入札で談合を繰り返していたとして、公正取引委員会は15日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、青森市の近畿日本ツーリスト青森支店など旅行会社5社を立ち入り検査した。近畿日本ツーリストが受注できるよう協力し、同社がほかの4社に業務を再委託して割り振っていた疑い。新型コロナ関連の公共事業で公取委が立ち入り検査するのは初めて。再委託に関しても同社は市から承諾を得ていなかった。

 関係者によると、立ち入り検査を受けたのはほかにJTB、日本旅行東北、名鉄観光サービス、東武トップツアーズの各青森支店。5社は、市が2022年度に発注したコロナの軽症患者を車で自宅から宿泊療養施設や医療機関に移送する業務で、落札業者や落札額を事前に決めるなど受注調整をした疑いが持たれている。車内をビニールシートで覆って運転席と後部座席を仕切り、運転手の防護服を準備するなどの感染対策も業務に含まれていた。

 22年度の入札は計5回あった。近畿日本ツーリスト、日本旅行東北、JTBの各青森支店が毎回入札に参加し、全て近畿日本ツーリストが落札した。落札額は計約3千万円(税抜き)だった。予定価格は事前通告されていた。落札率は初回の22年4月のみが74.9%で、2~5回目はいずれも93%台だった。弘南バスは初回1度のみの参加で公取委の検査は入っていない。

 近畿日本ツーリストは、毎回入札に参加した2社と、入札に参加していない名鉄観光サービス、東武トップツアーズの計4社に業務を再委託していた疑い。5社で仕事を分け合う形をつくっていたとみられている。契約では業務を再委託する際は、市に書面を提出して承諾を得る必要がある。だが近畿日本ツーリストは市に書面を提出しておらず、市は再委託を把握していない。

 市は、指名競争入札を開始する以前に、コロナ軽症患者の移送業務について日本旅行業協会東北支部青森県地区委員会委員長(近畿日本ツーリスト青森支店)と2度にわたり随意契約を結んでいた。契約金額は22年2月28日の契約が約340万円、同4月1日の契約が約335万円。

 市保健部によると、軽症患者の移送は当初、保健所が行っていた。患者が増加して市で対応できなくなったため、外部委託することにした。受託可能な事業者が見つからず、県の事例を参考に同委員会と随意契約を結んだ。その後、指名競争入札に切り替えた。

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