三宅一生さんが愛した福井県鯖江市の「大福あんぱん」 今もパリコレへ差し入れ続けるパン屋の思い

「恩」の書を刻んだ越前和紙のカードと大福あんぱんを差し入れた古谷聖津子副社長(左)ら=福井県鯖江市旭町2丁目のヨーロッパンキムラヤ

 パン製造販売の老舗ヨーロッパンキムラヤ(福井県鯖江市旭町2丁目)は、9月末から行われたパリ・コレクションで、2022年8月に亡くなったデザイナー三宅一生さんのブランド「イッセイミヤケ」のスタッフ陣に名物の大福あんぱんなどを届けた。生前から交流の深かった三宅さんへ哀悼の意も込め、パン箱には同市出身の書家、前田鎌利さんがしたためた「恩」の一字を刻んだ越前和紙のカードを添えた。

 キムラヤは10年以上前から、同ブランドのパリコレ参加に合わせ大福あんぱんを差し入れている。先代の頃から30年来の交流を続けてきた三宅さんとのかすがいの一つとして、副社長の古谷聖津子さん(55)が毎年パリに直接届けてきた。

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 三宅さんの没後1年となる今回の差し入れは、のれん分けを受けた木村屋総本店(東京)との共同企画。大福餅を特製のブリオッシュ生地で包んだキムラヤ名物の大福あんぱんと、総本店の看板商品の酒種あんぱん「桜」を一つずつ箱に入れ、50セットを贈った。

 「恩」のメッセージカードもそれぞれに同封した。前田さんへの書の依頼は、昨年前田さんがキムラヤ近くに開いた私設図書館「つぐみ」を通じた縁だという。台紙の越前和紙は、信洋舎製紙所(越前市定友町)が「墨流し」と呼ばれる技法で手すきした逸品。一枚一枚古谷さんが活版印刷機で印字し、「世界に一枚のカードで大切な恩を伝えたい」と思いを込めた。

 現地では、ブランドのデザイナーを引き継ぐ近藤悟史さんとも面会。スタッフからは「これからもずっと交流を続けてほしい」と喜ばれたという。

 パリコレに限らず、仏や米国で長年、日本のパン文化を伝える活動を続けてきたキムラヤ。そのパンは、三宅さんを通じ「世界の一線で活躍するたくさんの方々に知ってもらえた」と古谷さんは感謝する。パリコレへの差し入れは今後も続けていくといい、「これからもパンの魅力を世界に発信し続けたい」と語った。

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