【O157】集団食中毒 特養老人ホームの33人に症状うち2人が死亡…専門家は「他の食中毒よりも注意が必要」(静岡・西伊豆町)

西伊豆町の特別養護老人ホームで発生した、腸管出血性大腸菌「O157」による集団食中毒。33人が症状を訴え、このうち2人が死亡しています。

「O157」について専門家は、「他の食中毒よりも注意が必要だ」と話しています。

(ヒューマンヴィラ伊豆 佐藤友康 施設長)

「亡くなった人もいて、症状がまだ出ている人もいる。事態を大変重く受け止めている」

「O157」による集団食中毒が発生したのは、西伊豆町宇久須の特別養護老人ホーム「ヒューマンヴィラ伊豆」です。

県によりますと、11月3日の昼食に出された給食を食べた入所者と職員あわせて33人が、下痢や腹痛、血便などの症状を訴え、このうち入所者の76歳の女性と81歳の男性が死亡、8人が入院中です。入所者10人の便から「O157」が検出され、県は食中毒と断定。亡くなった2人の死因は、現在、特定されていませんが、「O157」への感染が原因で死亡が確認された場合は、県内初だということです。

施設の近くに住む人からは不安の声が…

(近隣住民)

「今週の始め頃から救急車が頻繫に向かっていたから、何かあったのかと」

「O157は普通の菌とは違うから心配です」

給食を調理したのは日本ゼネラルフードで、当時、炊き込みご飯、サバの竜田揚げ、がんもどきの含め煮など6品が提供されました。これを受けて県は、施設の調理部門に対し、当分の間、営業禁止を命じました。

(ヒューマンヴィラ伊豆 佐藤友康 施設長)

「死因の主たる原因はいまだ解明されていないが、きのう保健所から食中毒と断定されたのでこのような発表となった」「厨房業者含めて誠心誠意対応していきたい」

「O157」は3日~8日間の潜伏期間を経て、激しい腹痛を伴う下痢や血便などの症状がみられます。食中毒に詳しい専門家は、一般的な食中毒は夏に多いといいますが、「O157」は1年を通して感染が見られるため、他の食中毒よりも注意が必要だと説明します。

(広島大学大学院 統合生命科学研究科 島本 整 教授)

「一般的な食中毒を起こす細菌は、約100万個以上の菌を口にすると感染するのが一般的だが、O157は非常に少ない菌数で感染するのが特徴で、一般的には100個程度の菌を口にすると感染するといわれているので、そういう意味では、他の細菌性の食中毒よりは注意が必要だと言える」

(ここからスタジオ解説)

今回の「集団食中毒」について整理します。

施設の利用者は入所者も含め1日 約100人。原因は11月3日の昼食、この施設の中で作っていた「給食」でしたが、献立は「サバの竜田揚げ」や「そばサラダ」「パイナップル」などです。給食は「94食分」用意され、33人が「腹痛」などを訴え、このうち、入所者2人が亡くなりました。

「O157」の集団感染は過去にも発生しています。2011年、焼肉チェーンの「ユッケ」が原因で181人が感染5人が亡くなりました。厚労省によりますと、過去10年の「O157」による食中毒は、年間10件~30件ほど、患者数は100人~1000人で推移しています。原因となった食品は「牛肉」「牛のレバ刺し」「ローストビーフ」また「サラダ」や「井戸水」などがあげられています。

【О157の特徴】

1・感染力が非常に強い食品に、ごく少量ついているだけで感染してしまいます。また入浴やタオルの共用、トイレの取っ手などに付着した菌などによっても、他の家族に二次感染を起こすことがあります。

2・毒性が強いこの菌は大腸で増殖する時に猛毒を作り出します。特に、乳幼児や高齢者は、腎臓や脳に重大な障害を生じさせたり、生死にかかわる事もあります。

3・潜伏期間は3~8日と長く、その間は無症状。発生してからでは原因の特定が困難で、二次感染などで感染が広まる危険があります。

【主な症状と病状経過】

無症状な潜伏期間をすぎると、初期には下痢と腹痛が起きます。3日目くらいから激しい腹痛とともに、血便が出始めます。さらに重症化すると、腎臓障害や神経障害を引き起こすことがあるということです。

【予防方法】

県はこのように呼びかけています。

・食肉などは中心部まで十分加熱(75℃以上、1分以上)生食は避けましょう。

・生肉を扱った手やまな板包丁などの調理器具は他の作業をする前に洗浄、消毒をして下さい。

・野菜類はよく洗って下さい。

・動物イベントや搾乳体験後は良く手を洗って下さい。

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