世界1位のスタートアップは中国に アリババ、テンセントら躍進 グーグルの撤退など社会背景が後押し

中国

企業価値が10億ドルを超える未上場企業の「世界のユニコーン企業ランキング」。アメリカのスタートアップ企業「スペースエックス」を大きく突き放して世界1位になったのがTikTokを手掛ける「バイトダンス」です。中国のスタートアップ企業が躍進する理由は何か。早稲田大学の井上達彦教授に話を聞きました。

2010年にはグーグルが中国から撤退

チベット問題

井上教授は「アメリカの巨大なプラットフォーマーたちが、中国に入らなかった。だから『アリババ』や『テンセント』『バイドゥ』のような企業が、中国国内で育つしかなかったという環境があった」と話します。

1989年に起きた天安門事件。さらに、民族弾圧でゆれたチベット問題。中国政府は、国民がこれらのニュースに触れないようにするため、2009年にYouTubeを利用不能にしました。フェイスブックや旧ツイッターも制限の対象に。さらに、2010年にはグーグルが中国から撤退しました。

中国には、自国でそれらに変わるインフラを整えざるを得ない社会背景がありました。これにより、巨大な通信販売サイトを運営する「アリババ」や、中国最大の検索エンジンを提供する「バイドゥ」などが急成長したといいます。

世代が整えたインフラに乗っかって活用

早稲田大学・井上達彦教授

なぜ中国の社会背景が他のスタートアップ企業の成長を後押しする理由になったと言えるのか。

早稲田大学の井上達彦教授は「一言で言うと、『先代』。世代が整えたインフラ『通信インフラ』、『決済インフラ』、『コミュニケーションインフラ』に、後の世代のスタートアップ企業が乗っかって最大限に活用した。だからこそ成長が進んだ」と指摘します。

エコシステム

検索エンジンの「バイドゥ」など、巨大な中国企業のインフラがあることで、それを活用する「口コミサイト」などを運営する新たなスタートアップ企業が誕生。さらに、その口コミサイトを活用する、別のスタートアップ企業が生まれるなど、企業同士が互いに依存する「エコシステム」が構築されたためだと、井上教授は分析します。

日本にもミニエコシステムが必要

早稲田大学 井上達彦教授:
「(日本のエコシステムは)中国ほど大きくなくても良い。(日本も)エコシステム、『ミニエコシステム』『地域エコシステム』みたいなものを作ることができると思う。自力でエコシステムを作れれば、中国のようにスタートアップ企業を育てる事ができるようになると思う」

名古屋市には2023年10月、国内最大のスタートアップ支援施設「ステーションAi」が完成する予定です。井上教授は「ステーションAiが誕生すれば、地域エコシステムの機能を果たし、愛知で誕生するスタートアップ企業が成長する可能性は十分にあると考えている」と話しました。

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