[社説]米中首脳会談 対話重ね新たな関係を

 印象的だったのは、両首脳がこれからの米中関係はどうあるべきかを力を込めて語ったことだ。米中関係を新たな視点で定義づけようと試みたのである。

 米西部サンフランシスコで行われたバイデン米大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談。

 バイデン大統領は、両国関係を競争と位置付け、「競争が衝突に転じないよう責任ある形で競争を管理していかなければならない」と語った。

 習主席は競争ととらえること自体に反対し「大国間競争は時代の潮流に合わない」と中国封じ込めにくぎを刺した。

 競争についての両者の考え方の違いは、覇権を巡る「追われる者」(米国)と「追う者」(中国)の立場の違いを反映したものだ。

 既存の覇権国とそれを追う新興国との衝突は戦争に発展する事例が少なくないという。

 両国の対立は安全保障や先端技術など幅広い分野に及ぶ。対立が深刻化する中でも、今回、いくつかの分野では双方が歩み寄り、合意に達した。

 国防当局や軍高官による対話再開に合意したほか、人工知能(AI)に関する政府間対話の構築や気候変動対策に協力していくことでも一致した。

 不測の事態を避けるため米中が対話による問題解決を確認したことを歓迎したい。これをどう緊張緩和につなげていくか。

 壊れやすい合意を壊さないための努力が米中だけでなく日本にも求められる。

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 米中の間に横たわる最も深刻な問題は台湾問題である。 バイデン大統領は、米国が掲げてきた「一つの中国」政策に変わりがないことを強調する一方、来年1月の台湾総統選に干渉しないよう警告した。

 習氏は「必ず台湾統一を成し遂げる」と以前からの主張を重ねて強調し、米国による台湾への武器支援の停止を求めた。

 昨年8月、ペロシ米下院議長(当時)が台湾を訪問したことで米中関係は一気に悪化した。

 総統選の結果や米議会強硬派の出方次第では、首脳会談の合意事項が吹っ飛ぶ可能性もある。

 先に今回の合意を「壊れやすい合意」と表現したのはそういう意味である。

 実際、米議会の中には、これまで米国が堅持してきた「戦略的あいまいさ」を見直すべきだという声もある。

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 米国では東シナ海、南シナ海における中国の覇権的な行為や、専制主義的な政治への反発が根強い。

 日本でも中国の海洋進出や威圧的な軍事行動への警戒心が強く、嫌中感情は高止まりしたままだ。

 中国に対する強硬な政策が有権者から支持されるのは、こうした背景があるからだ。しかし、台湾有事をあおり対中包囲網の形成を説くような議論は、対立をエスカレートさせる可能性が高い。

 政府や日本の政治家に求められるのは、中国との対話の窓口を維持することである。

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