町田市 新美術館 建設入札が3回とも不調

町田市で建設が計画されている新たな美術館をめぐって、建設業者を選ぶ入札が3回にわたり決まらない事態となっていることがわかりました。また、建設をめぐっては近隣住民から見直しの声もあがっています。

町田駅から歩いて15分ほどの距離にある「芹が谷公園」。緑が広がる市民の憩いの場となっていて、国内外の版画を集めて展示している「版画美術館」も設けられ、「アートを楽しめる公園」としても親しまれています。現在、この公園一体を再整備して新たな美術館を作る計画が進められていますが…

記者:「公園前に建設のお知らせの看板があるが、時期は未定となっています」

建設計画は、「版画美術館」の横に新たに「工芸美術館」を作るとともにエレベーターを設置するもので、総事業費は約33億円を見込んでいます。

公園の利用者:「木をあまり切ったりせずに新しいもの作るなら悪いとは思わないけど、すごい複雑」「私たち下に住んでるし、年も取ってるからエレベーターができたら便利は便利だ」「市街地の外れでこれだけ自然があるのはすごい良いところだと思っているので、いまの環境はすごく良いかなと思います」

町田市は、この再整備により「公園の価値を最大限生かすとともに、街の賑わいを高める」と説明しています。しかし、町田市がこれまでに3回にわたって実施した建設業者を選定するための入札は、いずれも不調に終わっています。理由を市長に尋ねると…

石阪市長:「大阪万博じゃないけど、ものすごく(建設費が)上がっているので、金額の折り合いががつかないというのが一番大きな要素なんですよね。なかなか簡単にはいかないと思う」

石阪市長は建設費の増加を理由にあげ、その上で再整備計画の見直しはせず、契約内容を調整して対応する方針を示しています。

しかし、建設をめぐる課題は他にも。公園の周りを歩いてみると、多くの民家で計画の見直しを求めるのぼりが至るところに掲げられています。近くに住む男性は、樹木の伐採や騒音などの影響を懸念していました。

近隣住民:「500本の樹木が伐採される、そうなると土砂を運び出すと。根本的に工芸館を建てるのに反対しているのではなく、崖地ではなく、平地に建ててはどうですかと、場所はたくさんあるんです」

地域では建設見直しを求める署名運動も行われていて、現時点で9200筆ほど集まっているということです。見直しを求める動きに石阪市長は…

石阪市長:「3年くらい説明してますので、もう長い間説明しているので、新しくなにかということはない」

町田市の担当者は、4回目の入札の応募の次期は未定だと説明しています。

ここからは取材した白井記者と伝えていきます。そもそもこの計画はいつ決まったものなんでしょうか?

白井記者:「2013年に建設の方針が決まり、14年に計画が決まりまして、当初は2019年度に開館する予定でした。ただ、町田市の財政難による延期や今回の入札不調が続いたことで、まだ具体的な建設は始まっていない状況です」

入札が難航しているようですが、市長が挙げている建設費の高騰以外にも理由があるんでしょうか?

白井記者:「町田市の担当者に取材したところ、人手不足の問題も関係しているようで、美術館専門の作業員を確保することが難しいこともあるようです。ただ、事業者が入札でどういったことが評価されるのか、評価項目の内容を見てみますと、「緑地の保全」や「傾斜地の工事での工夫」「近隣住民への配慮を図る」という項目も入っています。事業者の入札を尻込みさせている理由のひとつに、地域の反対運動が起こる中で、これらの要件を満たす難しさもあるのではないかと感じました。やはり、町田市としては近隣住民の声にしっかりと耳を傾けながら、再整備の方法を考えていく必要があると思います」

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