<ライブレポート>コールドプレイ、6年ぶり来日公演で見せた慈愛に満ちた壮大なショーと平和への祈り、スペシャルゲストにはYOASOBIが登場

コールドプレイが、2023年11月6日、7日に東京・東京ドームにて、6年ぶりとなる来日公演【ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ・ワールドツアー】を開催した。スペシャルゲストとしてYOASOBIが出演したことも話題となった2日間のうち、6日のライブレポートをお届けする。

会場に入ると、両端に巨大な円形のLEDスクリーンが設置された大がかりなステージセットが目を引く。アリーナ中央にはセンターステージが用意されていた。2021年にリリースされたアルバム『ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ』は宇宙空間やSFをテーマに制作された作品ということで、東京ドームがどんな空間となるのか期待に胸が高鳴る。

18時になると、メインステージ後方に大きく掲げられた「YOASOBI」の電飾文字が光り、SEに乗ってコンポーザーのAyase、ボーカルのikuraとバンドメンバーがステージに登場。ikuraの「YOASOBI、始めます!」のひと言から「夜に駆ける」でライブがスタートした。歌い出すとすぐに「飛び跳ねろ!」と扇動するikuraと、挑発的に煽るアクションのAyaseの姿が円形スクリーンに映し出されて、オーディエンスは飛び跳ねて2人に応える。さらに激しく疾走する「祝福」を終えると、ikuraが「はじめまして、YOASOBIです! コールドプレイさんのツアーの日本公演にゲスト出演させていただいてるということで、光栄に思います」と挨拶。「私たちのライブを初めて観る人?」と呼び掛けると、多くの観客が手を挙げていたが、注目度満点の2人だけに、立ち上がって踊りながら曲を楽しむ人の姿が目立っていた。

「新曲やります」と歌い出したのは、TVアニメ『葬送のフリーレン』OPテーマ曲としてリリースされた「勇者」。ドラマティックな旋律に、それまで踊っていた人々もじっと聴き入っていた。「優しい彗星」では、コールドプレイのツアーコンセプトに合わせて、「一緒に大きな宇宙を創りましょう」と呼び掛けて、会場中がスマホの光に包まれたる中で歌い上げる。対照的に迫力のEDMでダークな世界観を創り上げた「怪物」から、「群青」へ。「最高の景色でコールドプレイに繋ぎたいと思います!」と呼び掛けたAyase、「みんなで歌って」と求めるikuraの言葉で会場中から歌声が集まった。最後は、2023年の音楽シーンを代表するメガヒット曲「アイドル」で大合唱となり、大喝采の中でコールドプレイにバトンを渡した。初めてライブを観る人が多いにも関わらずシングアロングとなるところが、いかにYOASOBIが日常的に聴かれているかを証明していた。

転換中のスクリーンにはコールドプレイが取り組む、環境問題などについて紹介する映像が投影されていた。アリーナ後方にはサブステージの電力を賄うためのエナジーバイク、ダンスエリアが設けられており、楽しそうに自転車を漕ぎながら発電に勤しむお客さんの姿も。開演直前には男女2人がステージに上がり、コンサートのチケット代が環境保全活動に役立てられていることを紹介すると、「それでは、みんなでバンドを迎えましょう! せーの、コールドプレイ!」と呼びこんでライブ開始となった。ツアー関係のスタッフかと思いきや、この2人は一般のお客さんで、バンド側の依頼で急遽登壇したようだ。

暗転すると、大歓声に迎えられてメンバーの4人、クリス・マーティン(Vo.Gt.Pf)、ジョニー・バックランド(Gt)、ガイ・ベリーマン(Ba)、ウィル・チャンピオン(Dr)が客席の間をぬってセンターステージへ上がり、そのままメインステージへ。アルバム通り、SE「ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ」から、クリスの「3、2、1!」の掛け声でリズミカルに「ハイヤー・パワー」でライブが始まり、いきなり紙吹雪が吹きあがった。ド派手なオープニングから続いたのは、2015年のアルバム『ア・ヘッド・フル・オブ・ドリームズ』からの「アドヴェンチャー・オブ・ア・ライフタイム」。ダンサブルなリフレインに踊る客席に、今度はアリーナに色とりどりのバルーンが舞い降りてきた。その数が半端じゃない。何度跳ねのけても次々と飛んでくるぐらいだ。入場時に配られたLEDリストバンドも次々とカラーが変わり、熱狂的なムードに包まれた。失恋を歌ったバラード「サイエンティスト」では、ジョニーが弾くアコースティック・ギター、ガイの骨太なベース、ウィルの淡々とリズムを刻むドラムが、ピアノを弾くクリスの切々とした歌声にピタリと寄り添う。「こんばんは、みんなに逢えてうれしいです。来てくれてありがとう」と、クリスが日本語で挨拶。さらに「こんばんは、アリーナ、スタンド、2階、こんばんは東京ドーム! 一緒に歌おう」と曲のエンディングを共に歌うよう求めて、美しいメロディーの合唱が東京ドームに広がっていった。

ライブは“PLANETS”、“MOONS”、“STARS”、“HOME”という4つのセクションに分けられており、ここからは第2幕“MOONS”となる。SEに続き、“あのイントロ”が鳴ると、客席がドッと沸いた。邦題「美しき生命」こと、「Viva la Vida」だ。メインステージでは炎が吹きあがり、会場中が大声でコーラスから曲に参加する。後半には紙吹雪が舞上がり、演奏を止めてオーディエンスのコーラスと共に曲が終わると、すかさず始まったのは「ヒム・フォー・ザ・ウィークエンド」。歓声が上がり、サビの<I'm feeling drunk and high/So high, so high>は大合唱に包まれた。まだライブ序盤にも関わらず、ところどころでクライマックスを迎えている感じだ。スタンド席を見渡したクリスは、様々な国の人が掲げている国旗やメッセージが書かれたボードを見ながら声を掛けると、アリーナの客席から親子をステージに招いてハグし、ピアノの前に横並びに座らせ、リクエストに応えて「エヴァーグロウ」を静かに丁寧に歌い上げた。感涙する親子の姿がスクリーンに映し出され、温かい拍手が贈られる感動的な1曲となった。“MOONS”を締めくくったのは、代表曲のひとつ「イエロー」。アコースティック・ギターの音色を中心とした柔らかい演奏と歌に呼応して、LEDリストバンドが黄色く光り客席を埋め尽くす光景は壮観だった。

第3幕“STARS”は「ヒューマン・ハート」からスタート。センターステージに登場したパペットとデュエットするクリス。2つの声が重なるうっとりとした時間が流れ、スタンド中央の客席の一部ではLEDリストバンドが赤く染まる。その光景がスクリーンに俯瞰で捉えられると、なんと客席に赤いハートが形作られていた。そんな驚きの演出がさりげなく行われるところは、世界最高峰のエンターテインメントショーならでは。あたたかなムードを一気に変えたのが、続く「ピープル・オブ・ザ・プライド」だった。ディストーションギターと強烈なビート、炎をバックにした勇壮なサウンドをバックに<誇り高い人々よ、さあ行こう>と歌うクリスは、“LOVE”と描かれたタオルを頭にかぶって曲を終えた。

想像もつかない広い宇宙空間に放り込まれているかのように、曲ごとに異なる音像、演出で変幻自在にライブは進む。アルバムでも印象的なエレクトロ曲「インフィニティサイン」が流れるとミラーボールが回り、メンバーがエイリアンの被り物で登場。クリスは客席に向かい手話でコミュニケーションする。エイリアン姿のままザ・チェインスモーカーズとのコラボ曲「サムシング・ジャスト・ライク・ディス」から、「ミッドナイト」へとメドレーが続いてから、オーディエンスのシングアロングを促して始まったのは、BTSとのコラボ曲「マイ・ユニヴァース」。スクリーンにBTSのメンバーが映し出され、飛び跳ねながら大合唱するオーディエンスの姿もスクリーンに映りハッピーな空気に包まれると、「今度は、みんなと一緒に心を込めて歌いたい」と日本語で呼びかけ、スマホを置くように求めて「ア・スカイ・フル・オブ・スターズ」へ。スマホをしまい両手を上げるオーディエンスと共に大合唱して、アリーナのあちこちからとてつもない量の紙吹雪が噴射された。中には星形の紙吹雪もあり、曲の世界観を表現した演出でとてつもない盛りあがりとなった。

いったんステージを降りた4人は、ステージに戻るとそのまま真っすぐセンターステージ、さらに客席を通ってアリーナ後方、スタンド前のサブステージに上がった。アンコール的なセクション“HOME”でライブは終幕へと向かう。アコースティック・セットで、「スパークス」をしっとりと歌うと、MCへ。「今大変なことが起きている世界に、東京から愛と優しさを送ろう。ガザ、イスラエル、ウクライナ、ロシア、どこでもいいし、家族に送ってもいい」と呼び掛けて、会場中が静かに両手でハートを作って平和への祈りを捧げた。するとクリスは「1か所、愛を送り忘れていたところがある」と、BTSのメンバー7人の名前を挙げ、「BTSに敬意を表してJINに贈った曲を初めて僕たちだけで歌います」と、兵役中のJINと共作した楽曲「The Astronaut」を紹介して優しく歌い届けた。曲の後半にはメンバー紹介から、1人ずつステージを降りて、最後はクリスだけが残って歌い終えると、大きな拍手を浴びながらメインステージへと戻っていく。

「フィックス・ユー」でオレンジ色の光が客席に灯ると、跪いて天を指さすクリス。ギターリフが延々と鳴り響いてチルアウトしていき、ラストに披露された「ビューティフル」では再びパペットがステージに登場してハイトーンでクリスと歌声を重ねる。スクリーンには青い星が映し出されて、両手を振りながら会場が一体となる中、ハートや星の形をした紙吹雪が盛大に舞いテープが放たれて、2時間に渡った壮大で感動のライブはフィナーレを迎えた。

Text:岡本貴之
Photo(コールドプレイ):Teppei Kishida
Photo(YOASOBI):Kato Shumpei

◎公演情報
【ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ・ワールドツアー】
2023年11月6日(月) 東京・東京ドーム

◎コールドプレイ セットリスト
1.ハイヤー・パワー
2.アドヴェンチャー・オブ・ア・ライフタイム
3.パラダイス
4.ザ・サイエンティスト
5.美しき生命
6.ヒム・フォー・ザ・ウィークエンド
7.エヴァーグロウ
8.チャーリー・ブラウン
9.イエロー
10.ヒューマン・ハート(※正式表記はハート記号)
11.ピープル・オブ・ザ・プライド
12.クロックス
13.インフィニティサイン(※正式表記はインフィニティ記号)
14.サムシング・ジャスト・ライク・ディス
15.ミッドナイト
16.マイ・ユニヴァース
17.ア・スカイ・フル・オブ・スターズ
18.スパークス
19.The Astronaut
20.フィックス・ユー
21.ビューティフル

◎YOASOBI セットリスト
1.夜に駆ける
2.祝福
3.ミスター
4.勇者
5.優しい彗星
6.怪物
7.群青
8.アイドル

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