「動くAED」走行開始 輪島市と北陸大連携

一次救命訓練に臨む運転手(左)と市民=輪島市内

 輪島市内で17日、自動体外式除細動器(AED)を搭載したコミュニティーバスの試験運行が始まった。市と連携して北陸大が取り組む研究の一環で、「動くAED」として乗客だけでなく路上の急病人にも活用し、救命率向上につなげる。バス2台での試験運行を重ねて効果や課題の検証を進め、市は搭載車両の増加を検討する。

  ●一次救命の訓練

 AEDは市内を走行するコミュニティーバス全15台のうち、市中心部を循環する「のらんけバス」の2台に搭載された。

 AEDは心停止状態の人に電気ショックを与えて救命する医療機器で、主に公共施設にある。市内には市設置分の73台があるが、近くにAEDがない家や路上で急病人が出た場合、バスを見つけて呼び止め、できるだけ早くAEDを活用することで、救命率が高まる効果が期待できるという。

 導入初日は一次救命の訓練が行われた。「車内での傷病者発生」「路上で傷病者を発見し救護」「路上で呼び止められ傷病者を救護」の3つの場面を想定し、運転手をはじめ、40~70代の4人が人形を使って心肺蘇生やAEDの使用方法を確認した。

 参加者は雨の中、人形やAED本体がぬれないよう気を配りながら、訓練に取り組んだ。港公民館長の萬正和彦さん(71)は「実際にやってみて戸惑うこともあった。AEDを有効に活用するためには、まず講習を受ける必要がある」と話した。

 研究は、市と包括連携協定を結ぶ北陸大医療保健学部の髙橋純子教授やゼミ生が2020年度から3年計画で進めてきた。市民290人にAEDに関する知識や使用経験などを尋ねるアンケートを実施し、一次救命措置に関する講習会を開催するなどしてきた。AEDをコミュニティーバスに搭載することで、救命に対する市民の意識向上も期待できるという。

 髙橋教授は「高齢化が進む小さい地域で、お互いの命を大事にする意識がより広まればうれしい」と話した。

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