グッドルーザー(3) バレーボール女子 大分商業 10年連続で絶対王者に阻まれる 【大分県】

第76回全日本バレーボール高校選手権大会(春の高校バレー)県代表決定戦

11月12日 サイクルショップコダマ大洲アリーナ

女子決勝

大分商業0(20-25、10-25、10-25)3東九州龍谷

東九州龍谷(東龍)の「2番手」に甘んじてきた大分商業だが、今年は最強の挑戦者として臨んだ。昨年の春の高校バレー県予選決勝では敗れはしたものの、8年ぶりにセットを先取した。今年は5月の全九州総合選手権で3位、9月の天皇・皇后杯九州ブロックで強豪相手に互角の戦いを演じてみせるなど九州でもその力を示した。だからこそ、春の高校バレー出場への思いは例年にも増して強かった。

10年連続で東龍と対峙した決勝の舞台。第1セット中盤まではこれ以上ないほど順調だった。リードする展開が続き、勢いも十分。最終的にセットは失ったものの、「勝てるかもしれない」と期待が生まれた。しかし、絶対王者は甘くない。第2セット序盤で、高さのない前衛のローテーションの弱点を突かれた。立て直しができないまま2セット、3セットを落とし、ストレート負け。森栄一郎監督が「東龍との大きな差は粘り通せるかどうか。うちは(1セット目のような接戦となった場面の)終盤や一旦つまずくとそこから崩れてしまう」と話したように、技術だけでなく、メンタルの弱さも勝敗を分ける結果となった。

攻守の要としてチームを引っ張った猪原悠莉明

試合後、悔し涙を流した選手たち。しかし、キャプテンの猪原悠莉明(3年)の表情は明るかった。「悔いはない。やり切った結果」と言い切った。ケガをして思うようにプレーできない時期もあった。チームをうまくまとめられず、キャプテンをやめたいと思ったことも一度や二度ではない。攻守の要としてチームを引っ張るプレッシャーとも戦った。決して楽な3年間ではなかったが、「このメンバーでここまで来れたことを誇りに思う」と胸を張り、「来年は絶対に勝ってほしい」と後輩へ思いを託した。

猪原と共にチームを引っ張ってきた佐藤実紗(同)も「今まで苦しいこともたくさんあったけど、今日、ここに立つことができてよかった。支えてくれた人にありがとうと伝えたい」と涙にぬれたまま笑顔を作り、前を向いた。

3年生は、これまで新型コロナウイルスの感染拡大で棄権敗退を経験するなど苦難を乗り越えてきた世代だ。森監督の「苦しい中でチームを引っ張ってくれた3年生には感謝しかない。彼女たちが残してくれたもの、思いを次の代につなげていきたい」という言葉からもその頑張りが伝わってくる。

思いを託された1、2年生には今大会、高い精度でスパイクを決めた次代のエース野中美空(2年)のようにポテンシャルの高い選手が多い。メンタルの弱さなど課題もあるが、野中の「今日の悔しさをバネに来年は絶対に勝つ」という思いの強さは全員に共通するものだ。打倒東龍を目指し、さらなる高みへ駆け上がってくれるに違いない。

最強の挑戦者として臨んだが、ストレート負けで終わった

(甲斐理恵)

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