独自の取り組みではもう限界 相次ぐ酪農家の廃業 ウクライナ危機・円安で飼料高騰 新たな支援策は? 広島

私たちが普段、飲んでいる牛乳ー。その牛乳を生産している広島県内の酪農家2軒が今月、廃業することが分かりました。

牛のエサである輸入飼料の価格が高騰する中での相次ぐ廃業…。酪農業組合では事態を深刻に受け止め、国に対して新たな支援策を求める考えです。

広島県内でも相次ぐ酪農家の廃業 ウクライナ危機で

ピースカウベル 茨木宏士さん(65)
「(輸入飼料の)価格が上がるに従って、どんどん赤字の幅が広がっていくというか、これで辞めざるを得んようになった」

広島県三次市甲奴町の酪農牧場「ピースカウベル」です。茨木宏士さんは父親の代からおよそ60年続けてきた牛乳の生産を、今月一杯で辞めることを決めました。

主な原因はエサの多くを占める輸入飼料の価格高騰です。ウクライナ危機以降、3割から5割程度上昇。円安の影響もあって高止まったままです。国から補助金も出ましたが、赤字は増える一方だったということです。

廃業を決めたのは9月。それまで茨木さんは経営を立て直すため、ほかの牧場と合併して牛舎を新築し、老朽化した機械を更新するつもりでした。ところが…。

ピースカウベル 茨木宏士さん
「牛舎を建てるのに今、価格が1.5倍くらいになっとるというか、莫大高くつくので」

ウクライナ危機以降、農業資材も高騰しています。

ピースカウベル 茨木宏士さん
「機械更新をすれば、もっと赤字になるんで、ちょっとできないということで辞めざるを得ん」

茨木さんは子牛の育成は続ける考えです。

組合独自の取り組みでも限界に…国に新たな支援策要望へ

柴田和広 記者
「こうした事態に、県内の酪農家の組合も大きな衝撃を受けています」

県内97軒の酪農家で作る、広島県酪農業協同組合=広酪(ひろらく)。牛乳の生産から供給まで関わる、酪農専門農協です。

広島県酪農業協同組合 温泉川寛明 組合長
「私としては非常に残念な気持ちで思っております。そういうのが2年3年と長期に渡って続くことによって、やっぱり誰だって『ガマンできん』という人が出てくるかも知れん」

実はウクライナ危機以降、全国で酪農家の廃業が相次ぐ中、県内の廃業はこれまで1軒だけでした。そのわけが広酪独自の支援策です。

こちらは牛の配合飼料を作る広酪の工場です。広酪では県内の農家と契約して牛のエサ用のイネを生産。そのイネを海外からの輸入飼料と混ぜることで割安なエサを農家に供給しています。そんな中で起きた、相次ぐ廃業…。広酪では、これまでの輸入飼料を購入した農家への補助では限界があるとみて、ガソリンと同じように販売価格を抑えて農家の負担を軽くする、新たな支援策を国に要望する考えです。

広島県酪農業協同組合 温泉川寛明 組合長
「今、ガソリンの方に国が補助金を出しているが、それを酪農版の中に入れて、しっかりと海外の輸入飼料に対しての補助金を出して頂きたい。もうこれ以上、酪農の廃業を認めるようなことがあったら絶対ならんと、私は考えております」

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牛のエサと言えばこれまで安い輸入飼料がいくらでも手に入っていた。今後は輸入飼料の価格を下げるとともに、国産飼料を増やすことが必要。(自給率は現在26%)広酪の飼料イネの契約栽培もその一環で、全国的にも珍しい取り組み。去年の140ヘクタール余りから、ことしは210ヘクタールに増やす。広酪は「消費者の方々に牛乳一杯を作るための苦労を、理解してほしい」と話している。

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