「不法占有」の可能性も? 長崎市の公民館が存続の危機 市に敷地貸す県が契約打ち切りへ 地元は反発

来年3月に敷地の貸借契約が終了する予定の愛宕団地公民館=長崎市彦見町

 地域活動を長年支えてきた長崎県長崎市彦見町の愛宕団地公民館が存続の危機にある。敷地を所有する県が、市に無償で貸している契約を来年3月で打ち切る方針だからだ。県は「一部地域を優遇する状態は放置できない」として、市に敷地購入を求めてきたが、公共施設の削減方針を掲げる市は「困難」と応じず、契約継続を望む。これまで両者の協議は地元に十分説明されず、愛宕団地自治会は「乱暴だ」と反発している。
 住宅密集地にある同公民館は鉄骨2階建て、敷地約250平方メートル。調理場も備え、月の約半分は会合や体操サロンなどで利用されている。自治会によると、もともと隣の県有地にあった。道路整備などに伴い1994年に現在の県有地へ移り、自治会が住民の寄付700万円を含む約2千万円を投じて建て替えた。

愛宕団地公民館の位置

 敷地の貸借は76年の時点で、県と市が有償で契約。市が自治会に有償で転貸していた。ところが90年からは、県が市に、市が自治会にそれぞれ無償で貸す単年度ごとの契約に変更した。
 県は「無償を認めた経緯は不明だが、将来的に市が敷地を購入する条件だった」とし、2016年度には市に購入の意思を改めて確認した。これに対し市は、公共施設の効率化を図る計画に基づき保有数を減らしており、「購入できない」と回答した。
 このため県は22年度に公民館敷地と隣接地の活用を検討。事業や収入が見込めないと判断し、売却の方針を決めた。
 今年3月、市に対し、知事名の文書で貸借契約を来年3月末で終了すると通知した。もし敷地が必要であれば優先的に市に売るとした上で、購入して自治会に貸すか、代替地を自治会に提供するよう依頼。地元自治会への説明も求めた。
 市は「購入する予算も代替地も簡単には用意できない」と契約継続を県に要望したが認められず、5月に地元住民に報告した。
 自治会にとっては「寝耳に水」だった。吉岡俊和会長は「県と市のやり取りは全く知らされていない。地域活動ができなくなる」と憤る。有志で公民館存続を目指す協議会を結成した。
 市によると、市内では平和町と戸町3丁目の集会所も県有地を使用。愛宕団地公民館と同様の契約終了を口頭で伝えられた。3施設とも建物自体は自治会所有のため、このままでは「不法占有」となる可能性がある。市財産活用課は「県にもう一度契約の継続をお願いするしかない」とする。
 一方、県管財課は「県有地の無償貸し付けは、他地域との間で不公平を生む」と理解を求めつつ、「まずは市と自治会が話し合って解決方法を考えてほしい」。地域の交流や活動の拠点がどうなるのか、先行きが見えないまま契約のタイムリミットが近づいている。

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