「夫が働けなくなった時に住宅ローンの返済が続くのが心配…」どうすればいい?

住宅ローンの借り入れをしている方は、万が一働けなくなったらどうしようと頭をよぎったことはないでしょうか。夫婦の場合、働き方や金融資産など状況によって対処方法は変わってきますが、どのように考えていくのが良いのかを解説します。


返済中の住宅ローンの団信をまずは確認する

住宅ローンの返済が滞ってしまったら…と不安に思った場合、就業不能保険など民間の保険を検討する人も多いことでしょう。ただし、実は、民間の保険を検討するのは最終手段にしたいところです。その前にやるべきことを順番にお話しします。

住宅ローンの契約時には、原則、住宅ローン専用の生命保険、団体信用生命保険(以後「団信」)の加入が義務づけられています。団信とは、ローン契約者に万が一の死亡や高度障害になった場合に、住宅ローン残高がゼロになる保険のことをいいます。なお、ひとことで団信といっても今はさまざまな上乗せ保障がつけられるものもあります。まずは、自分が上乗せ保障に加入しているのか?加入していればどんな内容か?をしっかりと確認しておく必要があります。

団信の上乗せ保障には、おもに以下のものがあります。

がん団信

所定のがんにかかり医師により診断確定された場合、残りの住宅ローンの返済義務がなくなる保障です。なお、上皮内がんや皮膚がんなど保障されないケースもあるので契約内容を確認する必要があります。

3大疾病

所定のがんや急性心筋梗塞、脳卒中をまとめて3大疾病といい、これらが原因で一定の要件に該当した場合、残りの住宅ローンの返済義務がなくなります。ただし、保険金の支払われる要件は疾病ごとに異なるため確認が必要です。

8大疾病

3大疾病に加えて、一般的に糖尿病、高血圧性疾患、慢性腎不全、慢性膵炎、肝疾患の5つの重度疾病を含んだ保障です。こちらについても、繰り返しになりますが、実際に罹患した場合に支払われる要件の確認がポイントになります。

要介護

公的介護保険制度の要介護2や3、あるいは保険会社所定の要介護状態と認定された場合、ローン返済の義務がなくなります。

以上がおもな上乗せ保障となります。

また、保険金の支払いについても注意が必要です。特に8大疾病で散見されるのが、所定の要件に該当した場合の保険金の支払われ方です。例えば、ローン返済日に就業不能で働けない場合、その月のローン返済分が保険金として支払われ、かつ12ヶ月間働けない状態が続いた場合に残債の支払いが免除されるケースには注意が必要です。つまり、「所定疾病に罹患=即時ローン返済義務がなくなる」ではありません。

自分が想定するリスクをカバーできるか、しっかりと契約内容を確認しておきましょう。

自分が持っている公的保障・企業内保障などを確認する

次に確認しておくことは、公的保障と企業内保障です。例えば、会社員や公務員が加入する健康保険は、病気やけがで仕事を休んで給与が出ない場合、所得保障として4日目から最長1年6か月まで給与の3分の2がもらえる「傷病手当金」があります。

また、勤務先の健康保険によりますが、傷病手当金の延長や見舞金、入院時の差額ベッド代の補助など独自のサポートが備わっているケースもあります。また、これらの支給があったとしても不安な場合には、勤務先の福利厚生制度にGLTD制度があるか調べておきましょう。GLTD制度は正式名称を団体長期障害所得補償保険といいます。病気やケガで長期間働けなくなった従業員に対して所得の減少をカバーする企業向けの保険です。後述する民間の就業不能保険と内容や保険料を比べて検討してみましょう。

これら勤務先の福利厚生制度については、勤務先の総務など担当部署に確認する、あるいは、社内のイントラネットに掲載があるか調べておくことをオススメします。

民間の保険は「必要な分だけ」x「最低限の保険料」で加入する

ここまでの解説で、働けなくなった時の住宅ローン返済について不安は解消されたでしょうか? 特に、家計の大黒柱が夫のみの場合、最大の不安は働けなくなった時の経済リスクといえます。実際の相談現場でも感じていることがあります。万が一の死亡保険に加入している人は多いものの、就労不能時への備えが手薄な人は意外と多いことです。特に50代以降になると、妻が働いて夫の収入分をカバーするのは非常に厳しいことが想定されますので、少しでも不安がある場合は民間の保険でカバーするのも一つの選択です。

民間の就業不能保険は、病気やけがで働けなくなった時に毎月保険金を受け取れます。ただし、各保険会社によって就業不能の要件が異なるため事前にしっかり確認する必要があります。具体的には2つのポイントを明確にしておくことです。1つ目はどの様な状態になったら保険金を受け取れるかです。例えば、入院している、医師の指示による在宅療養をしている、精神疾患は対象外、など取り決めを確認しましょう。

2つ目は保険金の支払い内容についてです。先述の通り、働けなくなっても傷病手当金などがありますから、いきなり無収入になるわけではありません。商品によっては、傷病手当金が出る期間の保険金を50%にして保険料を抑えるタイプ、就業不能61日目から保険金が出るタイプなどさまざまです。

以上から、自分が必要な保障を明確にして、民間の保険は「必要な分だけ」、そして「最低限の保険料」で加入したいところです。


以上、働けなくなった時の住宅ローン返済についての対策を解説してきました。ぜひ自分の傷病手当金や会社の福利厚生制度を確認して、必要があれば民間の保険を検討して万全に整えておきましょう。

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