糖尿病治療薬 足りない/やせる目的 使用増が影響/青森県内 新規処方、増量できず

GLP-1受容体作動薬(手前)について説明する長谷川院長。患者自身が腹部に注射して投与する=17日、弘前市のひろさき糖尿病・内科クリニック

 糖尿病治療に有効とされる注射薬「GLP-1受容体作動薬」が全国的に不足し、青森県内の糖尿病患者に十分に行き届かない状態が続いている。背景として、製薬会社の供給不足のほか、「やせ薬」としての使用が全国的に増えていることが指摘されている。県内の内科医は「治療が必要な糖尿病患者に確実に薬が届くように早く正常な流通に戻ってほしい」と語る。

 糖尿病治療の「GLP-1薬」は、インスリンの分泌を促し、血糖値を下げる。脳や胃腸に作用、食欲を抑制し、体重を減らす作用がある。数種類あるが週1回、皮下に注射するタイプが特に不足している。

 青森市の内科おひさまクリニックでは現在、製薬会社の出荷規制の影響を受け、新たに「GLP-1薬」を処方できずにいる。

 「新規の処方ができずに困っている。患者に申し訳ない気持ちだ」と冨山月子院長。同クリニックでは患者に薬の新規使用を待ってもらうか、GLP-1注射薬より効果が弱い代替の飲み薬に切り替えるなどして対応している。

 ひろさき糖尿病・内科クリニック(弘前市)でも2、3カ月前から「GLP-1薬」の出荷制限の影響を受け、薬増量の処方もできない状況という。

 「薬不足はどうしようもない状況」と困惑の表情を見せる長谷川範幸院長。青森県が重症の糖尿病患者が多く、死亡率も高い現状を踏まえ「治療が必要な糖尿病患者に薬が行き渡るようになってほしい」と語る。同院長によると、全国的な「GLP-1薬」不足の背景には、製薬会社の生産体制の問題のほか、“やせ薬”としての使用が全国的に増えていることがあるという。県外の一部の医療機関では、糖尿病治療以外の人に自由診療で薬を出すケースがあると言われている。「GLP-1ダイエット」と銘打ったサイトもあり、オンラインで比較的簡単に入手できる現状も薬不足に拍車をかけているとの指摘もある。

 糖尿病でない人が「GLP-1薬」を減量目的に使用することについて、長谷川院長は「不適切に使うことによる体への影響は、不透明な部分がある」と注意を促す。

 国は、重度の肥満症の患者に投与する「GLP-1薬」の新薬「ウゴービ」を22日に公的医療保険の適用対象にする。この動きが「GLP-1薬」全体に影響が及ぶかについて、県内関係者は「今のところ、どうなるか分からない」と話す。一方で、「GLP-1薬」が、やせ薬として使われる傾向がさらに強まり、薬不足が加速するのではないかと危惧する声もある。

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