廃墟を新たな観光資源に 宇都宮・大谷の旧山本園で初の一般公開ツアー アートと食文化楽しむ施設に

山の岩肌を利用した建造物を見学する人たち

 【宇都宮】大谷石の山肌と融合した独特の建造物で、かつて温浴施設などとして営業していた大谷町の旧山本園大谷グランドセンターを、新たな観光資源として活用しようと、所有企業が整備を進めている。市民にも関心を持ってもらおうと、19日には初の一般公開ツアーが行われた。アートと食を楽しむ施設に改修する予定で、2024年度内の開業を目指している。

 旧山本園は大谷公園(平和観音)の北西に位置。1967年に建設され、入浴や食事を楽しめる施設として昭和期に営業していた。大谷石の岩肌に抱きつくように作られ、自然と一体化したような建物が特徴。高台にあるため、通りからもよく見える。

 整備しているのは、井上総合印刷の関連会社、プロジェクトi(アイ)=岩曽町。同社によると、廃業から約30年が経過し廃虚となっていた。地域活性化につなげようと同社が2016年に取得し、22年から整備を進めている。建物は2階建てで延べ床面積約820平方メートル。計画では入浴施設だった1階をアートスペース、宴会場だった2階を飲食フロアとする。

 ツアーには午前と午後で計約50人が参加し、大谷石の荒々しい岩肌がむき出しのまま壁として利用されている1階と、平和観音などを望む2階を見学。廃虚の雰囲気が残る施設内を、スマートフォンなどで熱心に写真に収めていた。

 鶴田町、会社員熊坂桂子(くまさかけいこ)さん(57)は「ユニークな建物で面白い。改修後にオープンしたらぜひ来たい」と話した。

 同社の井上加容子(いのうえかよこ)代表は「採石の山肌を生かした建物に大谷の原風景を感じる。この土地らしさを楽しんでもらえる施設にしたい」と意気込んでいる。

旧山本園大谷グランドセンターの外観

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