「生死関わる」騎手怒り 金沢競馬レース中の消灯 ずさんな運営体制批判

照明が消えて落馬し、救急車に乗り込む騎手=19日午後5時34分、金沢競馬場

  ●馬主「補償求める」 1頭が安楽死

 「生死に関わる問題だ」。19日夕、金沢競馬場で起きたレース中に突然照明が消えるアクシデントに、暗闇の中で馬に乗った騎手たちは怒りに満ちた表情でレースを振り返った。タイマーの設定ミスで騎手3人が落馬、転倒した1頭は安楽死の措置が取られるという前代未聞の事態に、ファンや馬主からは「あり得ない」とずさんな運営体制を批判する声が上がった。

 午後5時10分、すでに日が落ちた競馬場で問題の第8レース(11頭)が出走した。スタートして1分弱、隊列が向正面に差し掛かったところで突然、走路照明が消えた。

 「何があったんだ」とスタンドから戸惑いの声が漏れる中、視界が失われたレースでも数頭がゴールまでたどり着いた。

 落馬した3人の騎手には、職員らが駆け寄って状態を確認。救急車が場内まで入って騎手を金沢市内の病院に搬送した。

 混乱の中、レースは審議となり、協議する声が場内スピーカーや公式ユーチューブチャンネルで一時流れた。

  ●レース不成立で苦情

 不成立が発表された後、県競馬事業局には、大型ビジョンの明かりで着順が分かったと訴えるファンらから「馬券が当たっていた。なんで不成立なんだ」などの苦情が20件ほど寄せられたという。

 ワイド馬券で予想した馬が上位を占めたとする福井市の団体職員男性(26)は「払戻金はトータル8万円を超えていたはず。がっかりした」と肩を落とした。

 第9レースに予定されていた東海・北陸交流重賞・北國新聞社杯第5回徽軫(ことじ)賞に騎乗するため、他競馬場から来たジョッキーは「僕は乗れません」と不安を漏らし、レース後、陳謝に訪れた臼井晴基局長に説明を求める騎手の姿も見られた。

 馬主からも「前代未聞の失態だ」と非難の声が上がった。徽軫賞で上位人気に推されていた馬の馬主は「他場のレースを見送って金沢に来た。補償を求める」と語気を強めた。

 京都市から観戦に来た男性(50)は「突然照明が消え、初めは演出かと思った」と驚き、金沢市の20代女性は「安全第一であり、レースの取りやめはやむを得ない」と話した。

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