子どもの自尊感情を傷つける「教育虐待」とは? 子どもの権利保護へ大事な大人の「気づき」 森田明美名誉教授が説く 

 子どもの権利を軸に、子どもの支援に取り組むことを考える講演会(主催・NPO法人介護と福祉の調査機関おきなわ)が3日、那覇市の県総合福祉センターで開かれた。児童福祉学が専門で、保育問題に詳しい東洋大学名誉教授の森田明美さんが講話。子どもの権利条約、今年4月に施行された子ども基本法を踏まえながら「子どもの訴え(表現)に気付き、言語化し、共有することが、子どもの権利の実現のために重要だ」と説いた。(学芸部・勝浦大輔)

 1989年に国連で採択された子どもの権利条約では「子どもの命を一番大事にしている」を大前提として紹介。同条約に日本は94年に批准しているものの、具体的な政策はなかなか進まず「本当に時間がかかっている」と指摘した。同条約の四つの一般原則を踏まえた子ども基本法が施行された現在に「このチャンスを逃すわけにはいかない」と話した。

 保育、教育現場ではしばしば、大人が思うように子どもを動かす「教育虐待」とも言える場面があるという。不適切保育の多くはベテランによるもので「ゆがんだ価値観の中に全てを入れ込もうとする。自分が絶対であると思っている」と問題点を挙げた。指示的な保育になると「子どもたちの自尊感情をズタズタにする。そして、そのことを子どもたちは忘れない」と影響を危惧した。

 そういった背景を説明した上で「『気付き』のトレーニングに力を入れている」と森田さん。「嫌」などを表現している子どもに対し、保育士がどう気付き、保護者に共有するか-。「子どもから訴えがないから放置するのではなく、周囲の大人がアンテナを張って気付ける感度を上げなければならない」と強調した。

 「世界は乳幼児期に最も時間とお金を使っている」と、乳幼児期の体験や成長の重要性も指摘した。県内のある保育園で、空いた時間に子どもたちがドリルを黙々とこなしていた事例を紹介。「園は良かれと思ってやっていた」と前置きしつつ、「乳幼児期は徹底的に遊び込むことが大事。その権利を侵害しないでほしい」と話した。

 地域全体で子育てに取り組む必要性にも言及。学校の児童生徒に赤ちゃんと触れ合わせるなどした自身が関わった取り組みも振り返った。「『生きていていい』『この土地に生まれて良かった』。子どもがそう思えるような関わりができるように力を合わせないといけない」と訴えた。

講演する東洋大学名誉教授の森田明美さん=3日、那覇市・県総合福祉センター

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