海外のECイベントとうまく絡めて並みに乗りましょう

11月に入りました。世間はクリスマスムードになってきていると思いますが、この時期はオフラインもオンラインも小売りは書き入れ時です。

日本の常識で行くと、クリスマスから歳末セール、初売りセールがピークと考え、成人式あたりまで何らかのキャンペーンを売っていることが多いかと思います。つまり、日本の場合12月が本番だと考えるケースが多いと思います。

しかし、海外では事情が異なります。年の瀬の消費のピークは11月です。なので、この記事を見たらすぐ準備しないとビッグウェーブを逃してしまい、また来年頑張りましょう、ということになってしまいます。

この時期は運送業者が多忙を極め、税関も混みまくるため、到着までに時間が掛かります。誰かの、あるいは自分のためのプレゼント購入をしても約束の日に渡せないというケースが増えるため、年末の買い物は11月のうちに済ませてしまおうという人がコロナ禍の時から年々急増しています。デジタルコマース360の最新データでは、「サンクス・ギビングからサイバーマンデーまでの5日間、消費者はバーゲンに積極的になるだろう。この期間中、小売業者はホリデー・ショッピング・シーズンで最もお買い得な商品を提供し、売り上げを伸ばす。この期間に買い物をする予定の消費者は66%で、2022年の49%から増加している」と報告しています。

ということは、越境ECの場合、照準を12月にするということは、閉店間際の値引き弁当の購入目的の人に銀座の銘店高級おせちを買わそうとしているようなものです。

今回は、越境ECで利用できる代表的なキャンペーンを11月から1年間分まとめます。これを積極的に利用して、売り上げアップを狙いましょう。

・11月11日:独身の日(中国)

中国発祥ですが、いまや世界中が便乗するようになってきています。

・11月14日:ディーワリー(インド、スリランカ、シンガポール)

ヒンドゥー教のラクシュミー(仏教では吉祥天)をお祀りする日で、これらの国ではセールス・イベントとして盛り上がります。

・11月第4木曜日:感謝祭

・11月第4金曜日:ブラック・フライデー

・感謝祭の次の月曜日:サイバー・マンデー

これら2つは欧米発祥ですが、世界中が普通に受け入れているセールスイベントとなっています。この感謝祭からサイバーマンデーまでの5日間を「サイバーファイブ」とも言います。

近年では、年末の買い物はこの11月のうちに済ませたと答える消費者が過半数を超えるようになっていますので、12月のクリスマスより、こちらのサイバーファイブのほうが本番と言えるでしょう。

昨年のアメリカのサイバー5収益(出典:Adobe Analytics)

・12月1日:ホリデー・ギフト・ガイド・リリース

これも、もともとは欧米発祥ですが、東南アジアでも普通に行われます。これは、「今年のおすすめギフト」を紹介するもので、紙やWEBでリリースされ、お買い物の駆け込み需要を狙います。

・12月1日~30日:年末一掃セール(台湾)

台湾では、12月の1カ月間はセールス・イベントとして盛り上がります。

・12月第2月曜日:グリーンマンデー

これは上記の一連の11月のセールのあと、12月第2月曜に売り上げが上がっている傾向があることが発見され、始まったセールと言われています。

・12月12日:12.12 ショッピング・フェスティバル

東南アジア発祥のショッピング・イベントで、東南アジア版の独身の日といった感じです。

・12月中旬(15日前後):送料無料の日

その名の通り、送料無料で配送することを約束したセール・イベントです。しかし、消費者と約束すべき条件があります。それは「クリスマスイブまでに必ず届けること」です。これが決め手で盛り上がるわけなのですが、日本からは配送日数が読めないので、あまりお勧めしません。

12月14日:お歳暮(日本)

ビジネスの世界では、お中元やお歳暮を禁止する企業もあり、日本では廃れかけてる習慣ですが、逆にこの習慣を世界に発信しながら、日本の商品を安く買える日として定着させてもいいかもしれません。

・12月24日、25日:クリスマス

これはもう言うまでもないセールスイベントですが、ほとんどの方はこの日に買うのではなく、この日までに買うので、販売者はもっと前から準備が必要です。

・12月26日以降:ボクシング・デー

欧米では年越しのニューイヤー・セールのほかに、このボクシング・デーも盛り上がります。これは、格闘技のボクシングではなく、キリスト教の教会が貧しい人のために寄付を募ったクリスマスプレゼントの「箱を開ける」日に由来しているもので、厳密にはクリスマスの翌日だけを指すのですが、実際には年明けまで続くセールとして行われることが多いイベントです。

・1月1日~30日:

初売りセール(日本)/ アジアの中で新暦の正月で盛り上がるのは日本くらいなので、他の地域に先駆けてセールを仕掛けるというのも戦略的には良いかもしれません。

・2月:旧正月

日本では旧正月に中国の人民大移動だけがニュースになりますが、中国だけでなく、東南アジアもこの時期に新年祝いで盛り上がります。

・2月~12月:母の日

母の日というのは5月では? と思われた方も多いと思います。日本はアメリカにならって5月ですが、世界の母の日は5月とは限らないのです。イギリスの母の日は、毎年2月から3月の間にあり、5月の母の日の前哨戦とも言われます。実は母の日は地域によって異なっており、母の日商戦商品は季節商品ではなく、考え方を変えれば通年商品とも言えるのです。

・2月14日:バレンタインデー

誰もがご存知のバレンタインデーは、もともとは欧米発祥ですが、今やアジアでも盛り上がっています。なお、日本は翌月に男性がお返しをするホワイトデーがありますが(現在の価値観では日本のバレンタイン、ホワイトデーは微妙な感じですが)、台湾などでは8月7日(旧暦の7月7日、七夕)にも、もう一回バレンタインがあり盛り上がります。

・3月8日:国際女性デー

本来は婦人参政権をめぐって「女性の政治的自由と平等のためにたたかった」人たちを記念する日ですが、なぜかECも盛り上がります。

・3月14日:ホワイトデー(日本)

日本発祥のイベントです。日本ではバレンタインは女性から、ホワイトデーは男性からという習慣がありますが、海外ではそもそも性に関係なくプレゼントしていますので、海外向けには男女どちらからでも大切な人にプレゼントする日として提案してもいいのではないかと思います。

・3月25日~27日:Lazada 創設記念フェスティバル

東南アジア最大級のECモールのLazada(ラザダ)の創設記念セールです。

・3月~4月:復活祭(イースター)

キリスト教のイベントですが、これに合わせてショッピングでも盛り上がります。

・7月:サマーセール

これは言うまでもなく、夏休みに突入するため、世界的に行われているイベントですね。

・7月~8月:お中元(日本)

理由はお歳暮と同じで、これも世界に発信して良い文化かと思います。

・8月(9月):バック・トゥ・スクール、バック・トゥ・カレッジ

海外では9月に新学期が始まるため、この時期に学校に行く準備のための買い物などのセールがよく行われます。

・10月1日:国慶節(中国)

中国だけでなく、アジアではこの日から本格的な年末商戦が開始されます。

・10月10日:ショッピング・イベント

シンガポールとマレーシアで企画されることが多く、この日は盛り上がります。

・10月下旬:ハロウィーン

これはキリスト教由来ではないため、欧米圏でも盛り上がる地域とそうでない地域と差がありますが、アメリカなどでは9月からセールは始まっています。最近はハロウィーンの怖い人形であるホーンテッド・ドールだけでなく、日本人形も怖くないか? ということで注目を集めています。

最後に、はっきりと何月とは言えませんが、ECが盛り上がるイベントに、イスラム教のラマダン月があります。ラマダンはイスラム暦9月の1カ月間で、太陽暦では毎年11日ずつずれていきます。2024年は、3月12日から4月11日までだそうです。飲食ができないのは太陽が昇っている間だけですので、日が沈めば普段の私たちと何も変わりません。実際米国の調査会社の調べでは、2023年のラマダンの時期は、小売消費支出が33%も急増しており、年々オンラインにシフトしているとのことです。

世界にはこれだけたくさんのショッピングシーズン(セールス・イベント)があります。すべて利用する必要はありませんが、その気になれば1年中なにか理由をつけてキャンペーンを打つことができます。こうした時期は、消費者のほうが消費意欲がおう盛になっていますので、うまく利用すれば、消費者と効率よく出会えることでしょう。

寄稿者 横川広幸(よこかわ・ひろゆき)ジェイグラブ㈱取締役

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