除雪の改善策は? 重機運転手らに聞く 鍵は「排雪」「住民理解」 青森・弘前市

1月末、豪雪の中で弘前市内の道路脇の排雪作業をする事業者
弘前市内で開かれた安全講習会で担当者の話に耳を傾ける参加者

 本格的な降雪期を前に青森県弘前市は17日、岩木文化センターで今冬の除雪を担う重機オペレーター(運転手)を対象とした安全講習会を開いた。毎年、深刻化する人手不足や住民からの苦情に悩みを深めている関係者に、東奥日報が現状の改善策を聞いたところ「排雪」と「住民理解」がキーワードに浮かび上がった。

 「『家の入り口に雪を寄せるな』という苦情が来ることがあるが、無理な要求だと分かってほしい」

 こう訴えるのは除排雪歴40年以上のベテラン三上賢治さん(76)。昔は雪を寄せる空き地が多かったが、今は少ない。大雪が続くと、物理的にどうしても雪の寄せ場所がなくなってしまう。そこで、別の場所へダンプカーで雪を運ぶ「排雪」が重要性を帯びてくる。

 除雪歴15年の60代男性は「排雪の回数を増やしてほしい。道路脇の雪だめがなくなれば作業もしやすくなり、住民からの苦情も少なくなるのでは」と語る。

 しかし排雪を多くしたくてもできない事情がある。ここ15年間で建設業者の担い手が2~3割減少。冬季に何度も、多くのダンプカー運転手を確保するのは難しい。市が今年、住民を対象に行ったアンケートでは、中心街住民の半数以上に当たる56%が除排雪経費を増やすことを望んでいることが分かったが、人手不足はお金があっても解消できない問題だ。

 排雪場所を増やすことを求める声も多い。市内には大規模な排雪場所が4カ所あり、満杯になった所は閉めるので常時開いているのは平均2カ所ほど。男性会社員(52)は「排雪場所が住宅地から遠いため、雪を運ぶのに時間がかかるし、ダンプカーが渋滞することもある」と話し、排雪場所を住宅地近くに増やすことを求めた。

 除雪歴9年目の農業椛沢帝城(たいき)さん(30)は「一番大変なこと」として「住民からの苦情」を挙げる。「家の前に雪が残っていると、わざわざ外に出てきて苦情を言われる」という。

 除雪は主に深夜から朝方までの作業。不定休の仕事でもある。そんな悪い労働条件に我慢できたとしても、住民の苦情に耐えられずに辞めてしまう若者が多いという。会社社長の石郷岡輝将さん(42)は「住民から除雪の様子をビデオ撮影された業者がいたとの話を聞いた」と語る。

 石郷岡さんは、若い人がなかなか根付かない原因について「給料(の低さ)ではない」と言い切る。「ここ(会場)にいるオペレーターも給料の条件で仕事を選んだ人は少ないはず。みんなプライドがあり『自分こそ一番(除雪の腕が)うまい』と思っている」と除雪のプロとしての誇りを強調した。

 「地域住民から『今日の除排雪はきれいだった。どこの会社(が担当したの)だろう?』と問い合わせが来ることが何よりうれしい」と笑顔を見せた。

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