青森県内企業 高卒に熱視線 9月末の求人倍率、過去最高4.14倍 県外流出に危機感

県が主催した16日の就職イベントで、弘前工業高校の生徒に自社の魅力をPRする県内企業の担当者

 全国的な人手不足の中、青森県内企業の間で高卒人材に対する引き合いが強まっている。来年3月に県内高校を卒業予定の生徒に対する9月末時点の求人倍率は、この時期としては統計開始以来最高の4.14倍で圧倒的な売り手市場だ。青森県の高卒生は他の都道府県に比べ県外就職の割合が高いため、県内企業の担当者は採用を「死活問題」と捉え、生徒たちに県内就職の魅力をアピールしている。

 16日、弘前市の弘前工業高校で県主催の高校生向けの就職イベントが開かれた。「皆さん、八戸市に来たことはありますか」。セイコーエプソンの子会社「エプソンアトミックス」(八戸市)で人事を担当する三原彰・事業管理部長が生徒に尋ねた。

 スマートフォンなどに使われる金属粉末製品で世界トップクラスのシェアを誇る同社が、2017年に始まったこの就職イベントで同校を訪れるのは初めて。25年度のリサイクル工場(同市)新設に向け、津軽地域でも採用を強化する考えだ。

 青森県企業を取り巻く採用環境は厳しい。県労政・能力開発課によると、地元就職を選ぶ県内の高卒生は6割に満たない。全国で8割、東北でも7割が地元を選ぶのに比べ、青森県の低さが目立つ。

 背景には青織県は就職先の選択肢や企業の情報が少ない印象があることや、賃金格差などがあるとみられる。

 企業は生徒たちの関心を地元に引きつけようと必死だ。イベントでは「『推し(いち推しのアイドル)』のコンサート行きにも会社の助成が出る」「都会で遊びたい気持ちは分かるが、お金がないと遊べない。平日に青森で働いて、休日に都会で遊ぶのが一番」と呼びかける企業もあった。

 エネルギー設備の保守管理を手がける「ジェイテック」(六ケ所村)で人事を担当する船橋憲治さん(44)は「給与だけでなく、休暇の取りやすさなど福利厚生面も充実させないと人材確保が難しい」と語る。同社はここ数年、県内の高卒生採用数を増やしているが、生徒数減の影響もあり採用が難しくなっているという。

 弘前航空電子(弘前市)の担当者は「即戦力に近い工業高校生を採用したいという思いはあるが、津軽圏外の企業との人材の取り合いが起きている」と話す。

 ただ、生徒は企業側とのギャップものぞかせる。就職するなら県外という同校建築科1年の男子生徒(15)は「建築や音楽に興味があるが、やりたい仕事は都市部にあると思う」。別の男子生徒(16)は「都会のキラキラ感に憧れる」と話した。

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